バスクの人々の郷土愛が詰まった「ガトー・バスク」を、スペインのパティスリーで作ってみた!【“旅するパティシエ”世界一周!郷土菓子レッスンの旅】

世界一周!郷土菓子レッスンの旅 in スペイン

こんにちは! 2016年から世界の郷土菓子を巡る旅に出た、“旅するパティシエ”鈴木あやです。

目標は、「国と国、人と人とをつなぐスイーツ・ストーリーテラー」になること。世界中で現地の人々から郷土菓子レッスンを受けながら、レシピだけでなく歴史・文化・暮らしと、立体的にその地域の魅力を発信していきます。

前回は、スペインはサン・セバスチャンでの、郷土菓子「ガトー・バスク」(パステル・バスコ/Pastel Vasco)の突撃取材の模様をお伝えしました。

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今回は老舗パティスリー「オイアルツン」での郷土菓子レッスンの模様と共に、【スペインの郷土菓子】ストーリーをお届けします!

「ガトー・バスク」の郷土菓子レッスン、スタート!

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家庭科の授業

まさかサン・セバスチャンを代表するパティスリーの工房で、そしてここバスクの地で、「ガトー・バスク」を一緒に作らせてもらえるなんて!

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今回先生を務めてくれたのは、パティシエのファン・マヌエル・ムニョスさん。16歳からパティシエをはじめたという、この道20年の大ベテランです♪

ガトー・バスクのレシピ

【生地】→ バスク生地

―材料(一般家庭で作りやすい分量)―

無塩バター …1kg
塩 …25g
アーモンドパウダー …75g
全卵 …3個
グラニュー糖 …1.125kg
薄力粉 …1.5kg
コアントロー …100g

―作り方―

1.  無塩バターをポマード状に滑らかにする

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2. 塩とアーモンドパウダーを加えて混ぜる

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3. 全卵を少しずつ加えて、その都度馴染ませる

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4. コアントローを加える

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5. ふるった薄力粉を加える

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6. 使いやすい量に分けて、1時間以上冷蔵庫で寝かせる

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【フィリング】→ カスタードクリーム

―材料(一般家庭で作りやすい分量)―

牛乳 …1ℓ
グラニュー糖 …250g
卵黄 …4個分
コーンスターチ …80g
バニラパウダー …少々

―作り方―
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1. 卵黄とグラニュー糖を、白っぽくなるまでよく混ぜる

2. コーンスターチとバニラパウダーを混ぜる

3. 牛乳を沸かして加える

4. 鍋に全て漉し戻して、とろみがつくまで炊く

5. 冷却する

【組み立て・仕上げ】

1. バスク生地を厚さ2~3mmになるまで伸ばす

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2. 底用と蓋用の、2種類のバスク生地を用意する(型の大きさに合わせて抜く)

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3. ラード(分量外)を塗ったタルト型に、バスク生地を敷く

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4. 中央にカスタードクリームを絞る

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5. アーモンドパウダーを少量ふりかける

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6. 蓋用のバスク生地で上部を覆う

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7. 軽くローストしたスライスアーモンドをのせ、つや出し用の卵(※分量外)を塗る

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8. 220°で10~15分焼成する(空気孔のあるオーブンの場合は開けたままにしておく)

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特に底と側面がしっかり焼けていれば、完成~!

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アーモンドの香ばしさがキッチンに充満して、なんだか幸せな気分になります♪

理科の授業

本場のガトー・バスク作りのポイントは、グラニュー糖の粒の大きさと、混ぜ込むタイミングにありました!

一般的には、水分量の少ない生地に使う場合の砂糖は、工程の始めの方にきめ細かいグラニュー糖を投入して、しっかりと溶かされる場合が多く、さらには、溶けやすくするために粉糖を用いることもあります。

しかし、ここオイアルツンのレシピでは、ひと味違ったグラニュー糖の使い方が創業当時から受け継がれていて、そしてそこにこそ、おいしさの秘密がありました。

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比較的粗めのグラニュー糖を、工程の最後の方に生地に混ぜ込み、完全に溶けていない状態のままで成型&焼成します。そうすることで、生地の中に残っているグラニュー糖の粒が焼成中に溶けてカラメル化し、焼き上がりはカリカリとした食感の生地になるというわけです!

国語の授業

「ガトー・バスク(Gâteau basque)」という名はフランス語で、スペイン語では「パステル・バスコ(Pastel Vasco)」……つまり、“バスクのパイ” 、“バスクのケーキ”という意味です。

その名のとおり、バスク生まれのこのお菓子……誕生したのは17世紀頃とされ、遠洋漁業へ出かける漁師のために、家族が準備した「日持ちするお菓子」がその起源だったといわれています。

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19世紀に入って、“フランス領のバスク”であるイッツァス・イクサス村の特産品「スリーズ・ノワール(Cerise Noire)」というブラックチェリーを中に詰めてみたところ、これが大好評となり、それ以降バスクの郷土菓子として定着したという説が有力なのだとか。

しかし興味深いのが、そもそもは「日持ちさせる」ことが重要だったため、「ガトー・バスク」が誕生した当初は、何も挟まれていないビスケットのようなお菓子だったのだとか。

それを裏付けるように、「ガトー・バスク」のことを、バスク語では「Biskotxa=ビスコッチャ」と呼ぶのですが、この言葉はなんと、フランス語の「Biscuit=ビスキュイ」と同じ意味なのだそうです。

社会の授業

日本で広く知られているガトー・バスクは、ラム酒を混ぜ込んでいるものが一般的かと思います。しかし、ここオイアルツンで一緒に作らせてもらったそれは、「コアントロー(Cointreau)」という爽やかな柑橘系のリキュールを生地に混ぜ込み、アーモンドスライスを飾り、香ばしさを倍増させるレシピでした。

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前述の“フランス領のバスク”で生まれた元祖 ブラックチェリー入りガトー・バスクよりも、“スペイン領のバスク”で主流の、カスタードクリーム入りガトー・バスクの方が美味しいと思う!そしてその中でも、ウチのお店のガトー・バスクが一番!…と語ってくれたのは、パティシエのフアンさん。

同じ郷土菓子でさえ、所変わればそこには大きな違いがあって、ひと口に「バスク」というレッテルで片付けることはできないのだと思う反面、多くのバスクの人々が共通して持っているであろう、「バスクの誇り」も感じた瞬間でした。

郷土菓子レッスンを終えて……

実際に一緒に作らせてもらった、出来立ての「ガトー・バスク」をパクリ!

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外はカリカリ、でも中はフンワリとした食感の変化が絶妙! シンプルで素朴な郷土菓子ですが、その分、バターの旨味やアーモンドの豊かな香りなど、素材の美味しさを贅沢に味わえます♪

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ただ作り方を教わるだけでなく、バスクの郷土菓子を通じて、バスクの人々の郷土愛も感じることができた、サン・セバスチャンの工房でのひととき。

工房にいるパティシエが皆、郷土菓子、そしてバスクの歴史や文化について驚くほど精通していることが、非常に印象的でした。

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私は彼らのように、自分の生まれた国や地域の文化について自信を持って語れることが、なにか一つでもあるだろうか? 身近にあるからこそ見落としがちな、感謝することさえも忘れがちな、自分の「郷土」というものを、彼らのように胸を張って表現できるパティシエでありたい。

そんな想いを芽生えさせてくれた、今回の郷土菓子レッスン in バスクなのでした。

“旅するパティシエ” 鈴木あや

広尾のパティスリー、ペニンシュラホテルのフレンチレストランなどで修行を積んだ後、会員制レストランにてシェフパティシエに就任。「国と国、人と人とを つなぐスイーツ・ストーリーテラー」になることを目指し、2016年1月から各地の郷土菓子を発掘する世界一周の旅に出発。

●ウェブサイト
旅するパティシエ, 旅する本屋

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