イギリス×オランダ×アフリカの郷土菓子!? 南アフリカで「マルヴァ・プディング」作りに挑戦♪【“旅するパティシエ”世界一周!郷土菓子レッスンの旅】

世界一周!郷土菓子レッスンの旅 in 南アフリカ

こんにちは! 2016年から世界の郷土菓子を巡る旅に出た、“旅するパティシエ”鈴木あやです。

目標は、「国と国、人と人とをつなぐスイーツ・ストーリーテラー」になること。世界中で現地の人々から郷土菓子レッスンを受けながら、レシピだけでなく歴史・文化・暮らしと、立体的にその地域の魅力を発信していきます。

前回は、南アフリカはケープタウンでの、郷土菓子「マルヴァ・プディング(Malva Pudding)」の突撃取材の模様をお伝えしました。

今回は、ケープタウンのパティスリーでの、郷土菓子レッスンの模様と共に、【南アフリカの郷土菓子】ストーリーをお届けします!

「マルヴァ・プディング」の郷土菓子レッスン、スタート!

家庭科の授業

パティスリーの厨房へと招かれると、なんとそこには、日本やヨーロッパにも引けを取らないほど立派な設備が!しかも、工場で大量生産するのではなく、ひとつひとつお菓子を丁寧に手作りしていることには驚きでした。

そして、今回先生を務めてくれたのは、パティシエのダイソンさん。笑顔が素敵な世話好きの彼は、この厨房を仕切るリーダ的存在です!

マルヴァ・プディングのレシピ

マルヴァ・プディングの材料(一般家庭で作りやすい分量)

 〈 プディング生地 〉

無塩バター …80g
アプリコットジャム …80g
グラニュー糖 …150g
全卵 …2個
薄力粉 …270g
ベーキングパウダー …20g
牛乳 …150g

 〈 ソース 〉

無塩バター …100g
グラニュー糖(もしくはブラウンシュガー)…100g
牛乳 …100g
生クリーム …100g

マルヴァ・プディングの作り方

1. 無塩バターをポマード状に滑らかにして、アプリコットジャムを混ぜる

2. 砂糖を溶かし、混ぜる

3. 全卵と牛乳を少しずつ加えて、その都度馴染ませる

4. ふるった薄力粉とベーキングパウダーを加える

5. お好みの型に生地を流し、165℃で30分ほど焼成する

6. 無塩バター・グラニュー糖・牛乳・生クリームをすべて一緒に温めて、ソースを作る

7. 焼き上がった生地の上から、熱々に温めたソースをかけ、底にも染みこませる

8. ソースが生地に浸透するまで、しばらく常温で置いておく

……そして、できあがり~!

 厨房いっぱいに、甘~い香りが広がっていきます♪

美術の授業

こんがり焼きあがった生地に、じわ~っとソースが染み込み、ツヤのある仕上がり!

冷やしても硬くならず、しっとりとした食感を堪能でき、また、カットして温めれば、アイスクリームをのせたデザートとしても楽しめるそうです。

理科の授業

湯煎で“蒸し焼き”にするのが、一般的なプディングの作り方。 しかしここでは、ベーキングパウダーを入れた生地を“焼成”します。そうすることで、生地を膨らませ、軽い食感を生み出しているのだとか。

また、乳製品をたっぷり使ったソースは濃厚で、まるで溶かした生キャラメルのよう!それをじっくり生地に染み込ませることで、しっとりとした仕上がりになります。

国語の授業

マルヴァ・プディングの「マルヴァ(Malva)」とは、英語で、アオイ科の多年生植物「ゼニアオイ属」を意味します。

なぜこの名が付けられたのか、確かな史実は残っていないそうですが、このプディングを食べるときに、よく一緒に飲まれていたお酒の名前だったのではないか、という説が有力なのだそうです。

社会の授業

私たち日本人にとって馴染みのあるプディング(プリン)とは違って、イギリス発祥のプディングは、“蒸し焼き料理”全般を指します。

南アフリカでもポピュラーなスイーツである「ブレッド・プディング(Bread Pudding)」や「トフィー・プディング(Toffee Pudding)」などは、まさにイギリスの伝統的なプディングを継承したもの。

しかし、今回一緒に作らせてもらったマルヴァ・プディングは、その枠組みには当てはまらない、まさに南アフリカ独自のプディングと言っても過言ではありません。

そのはじまりは、オランダからの入植者であるボーア人の家庭料理の中から生まれたとされる、マルヴァ・プディング。元々は重曹とビネガーを溶いて、泡立てた生地を蒸していましたが、次第にベーキングパウダーで膨らませた、パウンドケーキに近いものへと発展していったそうです。

また、南アフリカは世界有数のアプリコットの産地として知られていることから、酸味あるアプリコットジャムを生地に練り込む、というレシピが定着したのだとか。

郷土菓子レッスンを終えて……

実際に一緒に作らせてもらった、出来立てのマルヴァ・プディングをパクリ!アプリコットがほんのり香る生地に、ミルキーなソースが染み込んでいて、贅沢な味わいです♪

イギリスの伝統の味を受け継ぎながらも、オランダ、そして南アフリカのエッセンスを取り入れながら誕生した、マルヴァ・プディング。まさに、世界有数の多人種・多民族国家の南アフリカならではの郷土菓子です。

ただそれは、出来上がったマルヴァ・プディングだけでなく、それを生み出す「キッチン」にも言えることでした。

厨房では、ひと口に黒人といってもさまざまな部族出身の方々がいて、また、カラードとよばれる混血の人々や、なかにはジンバブエをはじめとする近隣諸国から出稼ぎにやって来た人々も、皆が一緒に働いています。

それだけを聞くと、キッチン内でのコミュニケーションの難しさを、誰もが真っ先に想像してしまうと思います。

しかしながら、私が日本でパティシエとして過ごしてきた厨房、さらには世界各地でお邪魔させてもらった厨房、それらのどこよりも圧倒的な“明るさ”を感じる場所でした。

そしてその雰囲気を作り出しているのは、美味しいお菓子を作ることにひたむきな、皆の活き活きと働く姿だということは、私だけでなく誰の目にも明らかです。

人種差別的政策「アパルトヘイト」の撤廃以降、多人種・多民族の共存を目指して歩みを進めてきた、南アフリカ共和国。

しかし現実には、未だあらゆる場面で人種差別が表面化しているそうで、滞在中は私も、人種によってその生活圏に大きな隔たりがあることを、目の当たりにしてきました。

それでもこの国のキッチンで、この国の郷土菓子を、この国の人々と一緒に作らせてもらえたことで、南アフリカの目指す姿、そしてその確かな歩みの一端を、肌で感じることができたように思います。

それと共に、世界の郷土菓子を通じて、パティシエの自分にはなにができるのか。その大切なヒントをもらえた気がする、今回の郷土菓子レッスン in 南アフリカなのでした。

“旅するパティシエ” 鈴木あや

広尾のパティスリー、ペニンシュラホテルのフレンチレストランなどで修行を積んだ後、会員制レストランにてシェフパティシエに就任。「国と国、人と人とをつ なぐスイーツ・ストーリーテラー」になることを目指し、2016年1月から各地の郷土菓子を発掘する世界一周の旅に出発。

●ウェブサイト

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