ジャマイカの郷土菓子はレゲエに通ず!?「コーンミール・ポテトプディング」作りに挑戦!【“旅するパティシエ”世界一周!郷土菓子レッスンの旅】

世界一周!郷土菓子レッスンの旅 in ジャマイカ

こんにちは! 2016年から世界の郷土菓子を巡る旅に出た、“旅するパティシエ”鈴木あやです。

目標は、「国と国、人と人とをつなぐスイーツ・ストーリーテラー」になること。世界中で現地の人々から郷土菓子レッスンを受けながら、レシピだけでなく歴史・文化・暮らしと、立体的にその地域の魅力を発信していきます。

前回は、ジャマイカの郷土菓子「コーンミール・ポテトプディング(Cornmeal Potato Pudding )」の突撃取材 inオーチョ・リオスの模様をお伝えしました。

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今回は「ティナズ・ゲストハウス(Tinas Guest House)」のオーナー、バーバリー(Beverly)さんによる郷土菓子レッスンの模様と共に、【ジャマイカの郷土菓子】ストーリーをお届けします!

「コーンミール・ポテトプディング」の郷土菓子レッスン、スタート!

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家庭科の授業

作り方を教えて頂いたのは、バーバリーさんのおばあちゃんの世代から受け継がれているという、ジャマイカの郷土菓子「コーンミール・ポテトプディング」。

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まさかまさかの、薪火を使う本格的な調理実習でしたが、もちろん電子オーブンでも作れますので、くれぐれもビックリしないで下さいね(笑

コーンミール・ポテトプディングのレシピ

コーンミール・ポテトプディングの材料(直径20センチ~25センチほどの型 一台分)

さつまいも …500g

マーガリン(もしくはバター)…大さじ4.5杯

ドライレーズン …200gアーモンドエッセンス …少々バニラエッセンス …少々ナツメグ …1/2個分薄力粉 …250g塩 …小さじ1/2ヤムイモ …250g
※日本で手に入るヤマイモで代用可シナモンリーフ …3~4枚オレンジリーフ …1枚天然ココナッツの実 …適量
※市販のココナッツフレークで代用可ココナッツミルク …400gコーンミール …400gブラウンシュガー …800g牛乳 …適量

コーンミール・ポテトプディングの作り方

※下準備
・型にマーガリンと薄力粉を塗っておく
・お庭の薪に火をおこしておく(電子オーブンの場合、180℃で湯煎焼きの準備をしておく)

1. サツマイモの皮をむき、火の通りやすい大きさにカットする。

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2. ひたひたの水で茹でて、火を入れておく。

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3. ある程度ダイス状を残しておきながら、マッシュポテト状に潰す。

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4. 400gのブラウンシュガー、マーガリンとアーモンドエッセンス、バニラエッセンスを加える。

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5. 粉状にしたナツメグとふるった薄力粉、塩を加える。

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6. ヤムイモの皮をむき、火の通りやすい大きさにカットする。※写真はカットする前のものです

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7. オレンジリーフ、シナモンリーフで香りを付けながら、6をひたひたの水で茹でて火を入れる。

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8. ヤムイモに火が通ったら、マッシュポテト状に潰し、コーンミールと400gのブラウンシュガーを加えて混ぜる。

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9. ココナッツミルクとココナッツの実をミキサーにかけて濾し、ココナッツジュースを作る。

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10. 9で出来たココナッツジュースのうち400g(足りなければ牛乳を足す)と、レーズンを加えて、弱火で絶えず鍋底を混ぜながら、とろみが付くまで火を入れる。

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11. 5と10を一緒に合わせて混ぜ、テクスチャー(どろっとした重みのある状態)と味(甘みと香りが足りなければ足す)の確認を行う。

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12. 薪火で約2時間半、焼成する。 ※下火は湯煎、上にも火種を置いて上火を設置する。

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13. 焼き上がったら粗熱を取り、一晩冷蔵庫で冷却する。

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……そして、できあがり〜!!

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見た目にもどっしりとした重厚感が伝わってくる、コーンミール・ポテトプディングの完成です♪

 

国語の授業

イギリスが発祥とされ、17世紀の植民地時代にジャマイカに伝わったといわれるプディング。

そもそも「プディング」とは、“蒸し焼きの調理”をした料理全般を指す名称。蒸し焼きにすることで、水分と旨味が凝縮し、密度のある生地に仕上がります。しかし今回のように、その中でも特別な蒸し方をするものに対しては、もう一つ別な名前があるのだとバーバリーさんは教えてくれました。

その特別な蒸し方とは、薪を使って下火(湯煎)と上火で焼成する伝統的な手法のことで、こうして作られるプディングのことを、ジャマイカでは古くから「Jamaican Riddle Sweets 」……つまり、“まじないスイーツ”と呼ぶのだそうです。

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作るときに“おまじない”をするという、この「Jamaican Riddle Sweets 」

どんなおまじないかというと、まずは焼成中に皆で薪を囲いながら「Hell a top, Hell a bottom…(上は地獄、下も地獄…)」と合唱することから始まります。ここで言う、「top」とは上火、「bottom」は下火を指しているのだとか。

次に、輪の中にいる一人が「What is middle?(真ん中はなに?)」と問いかけると、残りの皆が声を揃えて「Hellelujah in the middle!(真ん中には、ハレルヤ!)」と答える。「ハレルヤ」とはキリスト教で感謝の喜びを表す言葉で、つまり、上も下も地獄だけど、真ん中のプディングは美味しくなりますように!…といった内容のおまじないなのだとか。

ジャマイカでは誰もが知っているというこのフレーズ。薪火を囲んで唄いながら、プディングが出来上がるまでの時間もみんなで共有するのだそうです。

社会の授業

単純にコーンミール・ポテトプディングの作り方だけを追っていると、イギリス発祥のプディングがそのままジャマイカの食文化に取り入れられたようにもみえました。

しかしバーバリーさんは曰く、ジャマイカ人にとってのプディングのルーツは、実はアフリカの郷土菓子にもあるのだとか。なるほどそれもそのはず、多くのジャマイカ人は、そもそもはアフリカからやって来た人々なのですから。

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では、そのルーツとは何なのかというと、西アフリカ生まれの「ドコノー (Duckunoo)」というお菓子で、サツマイモがベースの生地をバナナやプランタンの葉っぱに包み、なんとお湯でグツグツと茹でて作るものなのだとか!

このドコノーに、イギリス植民地時代に伝わったプディングの要素が加わったことで、次第に、“茹でる”よりも、“蒸し焼き”にする調理が主流となっていったのだそうです。

理科の授業

アフリカの郷土菓子がルーツであるという点は、メインに使われている材料からうかがい知ることができます。コーンミール・ポテトプディングの材料の主体となっているのは、サツマイモヤムイモといったイモ類。

ヤムイモは、加熱して力を加えることで粘性が出て、モッチリとした弾力のある食感を生み出し、一方でサツマイモは、加熱することでデンプンが糖化して、甘みが増すという作用があります。

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ジャマイカの人々の主食であるこれらのイモ類は、有史以前からアフリカの人々の生活に根付いていたと考えられている食物。日常的な食事から祭事に用いられる食材まで、現代においてもアフリカはイモ類の一大生産・消費地となっています。

実際に、西アフリカ生まれの郷土菓子である「ドコノー」のメインの材料はサツマイモであり、また、ヤムイモはご存知、アフリカと、ジャマイカをはじめとする中米で多く生産されているお芋です。

美術の授業

使われている材料からもイメージできる通り、仕上がりは全体的に茶色く、見た目はとっても素朴。

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お砂糖の種類や焼き加減によっては、なんと黒色に仕上がるプディングもあるのだとか! 実際に私も、真っ赤なドレンチェリーで彩りが添られた黒っぽいプディングを、街中で発見することができました。

郷土菓子レッスンを終えて……

冷却するために一晩待って、ようやく口にできた「コーンミール・ポテトプディング」をパクリ♪

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薪火でゆっくりと時間をかけた、昨夜の火入れ効果が出ていて、全体的に柔らかくクリーミー! また、もちもちとしたヤムイモが印象的なのはもちろん、所々に入っているサツマイモのダイスがアクセントにもなっていて、様々な食感を楽しめます。

口に運ぶ度に、次々と違った表情をみせてくれるコーンミール・ポテトプディング。多様なスパイスと、薪のスモーキーな香りが凝縮されていて、とにかく贅沢な味わいなのです♪

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レゲエ・ミュージックが象徴するように、彼らの故郷であるアフリカのルーツを拠り所として、守るべきものは頑なに守りつつ、変えるべきものは柔軟に変え、結果として独自のカルチャーを生み出してきたジャマイカの人々。

そしてそのオリジナリティと醍醐味は、コーンミール・ポテトプディングをはじめとする、ジャマイカの郷土菓子からも体感することができました。

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帰国後に商品開発をする際は、ただコピーをするでも、安易にアレンジするでもなく、自分のルーツを大切にしつつ、ジャマイカの人々のようなしなかやかさを持ったパティシエでありたい。

そんな刺激を受けた、今回の郷土菓子レッスンなのでした♪

“旅するパティシエ” 鈴木あや

広尾のパティスリー、ペニンシュラホテルのフレンチレストランなどで修行を積んだ後、会員制レストランにてシェフパティシエに就任。「国と国、人と人とをつ なぐスイーツ・ストーリーテラー」になることを目指し、2016年1月から各地の郷土菓子を発掘する世界一周の旅に出発。

●ウェブサイト
旅するパティシエ, 旅する本屋