連載「世界一周!郷土菓子Lessonの旅」、今回はインド!
こんにちは! “旅するパティシエ”鈴木あやです。2016年1月から、世界の郷土菓子を巡る旅に出発します。
目標は、「国と国、人と人とをつなぐスイーツ・ストーリーテラー」になること。世界中の郷土菓子を発掘しながら、レシピだけでなく歴史・文化・暮らしと、その地域の価値を立体的に学んできます!
……とはいえ、出発前には準備が必要!ということで、KitchHikeを利用しながら、日本に住む外国人COOKの元へと訪ねて「予習」をします♪
前回は、イスラエルの郷土菓子の予習をするために、東京・新代田に住むイスラエル人・ベンジャミンさんのお宅に訪問しました。
中東・イスラエルの郷土菓子はどんなお味?【“旅するパティシエ”世界一周!郷土菓子レッスンの旅】
第3回目となる今回は、【インドの郷土菓子】。
インドへは実際に、来年7月に訪ねることを予定しています!
インドって、どんな国??

南アジアに位置するインド。人口は約12億人・世界2位、中国に次いで今最も経済成長著しい国のひとつです。
その歴史は古く、紀元前2500年〜紀元前1500年頃に栄えたインダス文明が始まりと云われています。その後、アーリア人やイスラームの侵入を受けながら、様々な王朝が誕生しては消え、最終的には大英帝国の植民地となりました。約90年に渡る支配から独立を果たしたのは今から約70年前、1947年のことです。

また、その激動の歴史の中で多くの宗教が誕生しました。仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教などは、インドが発祥の地だと云われていて、ほかにもイスラム教徒やキリスト教徒なども一定数を占め、まさに「宗教のるつぼ」です。
私たち日本人にとっては、1980年代〜1990年代のバックパッカーブームで多くの若者たちがこぞってインドに旅に出た背景もあり、今ではとても身近な国となりました。
実際、私のまわりにもインドを訪ねたことのある友人が非常に多いのですが、話しを聞いてみると、「ハマってしまって、何度でも行きたい」という人もいれば、「もう二度と行きたくない」という人が、はっきりと二分するのです……!
こんなにも人の印象が白黒はっきりと分かれる国なんてあるのね……と、ずっと不思議に思っていたのですが、先に綴ったような侵略と宗教の歴史から生まれた“混沌”がその要因なのかもしれませんね。
そんなミステリアスな一面も相まって、以前からインドの食文化が気になって仕方がなかったワタクシ、旅するパティシエなのです。
インドならではの郷土菓子って??

フランス料理や中華料理、日本料理などと並び、世界的に広く認知されている文化のひとつ「インド料理」。しかし、ひと口にインド料理といっても、世界第7位の国土面積を誇るこの国には、北インド料理・南インド料理・ベンガル料理・ゴア料理など多種多様なバリエーションが存在しています。
これはきっとお菓子も驚くほど多いに違いない…と思っていたら、案の定!ちょっと調べるだけで、挙げればキリがないほどたくさんの郷土菓子を発見することができました。
でもそれらの中にも、確かに共通点はありました。それはどれも、「スパイス」と「砂糖」をふんだんに使ったお菓子であるということ。

「スパイス」については、言わずもがなですね。インド料理といえば「カレー」を連想しますが、そもそもこれは旧宗主国の人々、つまりイギリス人が「香辛料を使った煮込み料理」をひとくくりにして呼んだ名前。日本でいうところの、醤油を使った料理をすべて「ソイソース」と呼ぶことと同じです。
そのためインド人にしてみれば「カレー」は乱暴な呼称なわけですが、言い換えれば外国人にとってのインドは、それだけ“スパイス天国”だったということの現れだと思います。
一方で「砂糖」はどうでしょう。例のごとく、暑い国だからエネルギー摂取としてふんだんに砂糖を使用している……?と思いきや、もっと奥深いルーツがそこにはありました。
砂糖の原料のひとつ「サトウキビ」は、ニューギニア周辺の島々が原産地だと考えられていますが、なんとそれを世界で初めて「砂糖」に生成したのがインドなのだそうです!
なるほど、そういった歴史的背景を踏まえると、インドの昔ながらの伝統的なお菓子で、砂糖が特に重宝されているのも納得がいきます。
ちなみに、それを象徴してかは分かりませんが、インドで非常に人気の高いヒンドゥー教の神様・ガネーシャの左手に乗っているのはなんと、「モーダカ」という砂糖菓子なのだとか……!

東京の東雲で味わえる、北インド料理
これまでの予習とは違って、謎が多いというよりも、インドらしく良くも悪くも情報がまだまだ“混沌”としているので、アタマの中を整理しておかねば!
というわけで、東京は東雲にお住まいのインド人COOK、ギータンジャリ (Geetanjali) さんの元へと行って来ました!
- 掲載メニュー: 北インド料理
- COOKプロフィール: インド人のGeetanjaliさん
- 値段: 約5,400円(US$45)
- 場所: 東雲(りんかい線)より徒歩10分
「Welcome!!」
まぶしいほどの笑顔で出迎えてくれたギータンジャリさん。キッチハイクのウェブサイトで見たプロフィール写真通り、美しすぎるCOOKに衝撃……!

そして家の中にお邪魔すると、事前に準備してくれていたお料理の仕込みで、すでにお部屋はスパイスの香りでいっぱい♪ エスニックなインテリアも相まって、まるで本当にインドに来たかのようでした!
また、驚くべきは彼女のCOOKとしてのプロフェッショナル精神。イントロダクションとして、お茶を頂きながらインドの歴史・文化について丁寧に説明をしてくれたのはもちろん、なんと私のためにインド郷土菓子のレシピをレジュメにまとめてくれていたのです……!

旦那さまの転勤で、日本に住んでもう8年になるというギータンジャリさんですが、この日本人顔負けのおもてなしは私も学ばなければ……と、すっかり感心してしまいました。
インド料理はまさに“スパイス・マジック”
郷土菓子レッスンの前にメインディッシュを!……ということで、まずは本場の北インド料理レッスンから。
全部で5品も用意してくれるということで、まさにフルコース!ただ、そんなに作って頂いて、時間は大丈夫なのかしら?……と心配をする私をよそに、テキパキと調理に取りかかるギータンジャリさん。

しかし、私もお手伝いをしつつ調理を進めていくと納得。彼女は、主婦とは思えぬ料理の腕前の持ち主だったのです!
パニール パサンダ (Paneer Pasanda)
インドでは定番のカッテージチーズ (非熟成チーズ) を押し固めた「パニール」を入れたカレー。パニールの見た目はまるでお豆腐のようなのに、弾力のある食感で、且つカレーの味わいをマイルドにしてくれます。
プーリー (Poori)
チャパティ (小麦粉で作った円形の生地) を油で揚げた、インドの揚げパン。日本ではナンが一般的ですが、実際インドではナン以上にプーリーの方がよく食べられているのだそうです。
……といったように、プロ顔負けの手際の良さで調理を進めていくギータンジャリさん。
その中でも私が特に注目したのが、「カッドゥ カシファル (Kaddu Kashifal)」でした。
平たく言えば、私たち日本人にも馴染みの深い「カボチャの炒め物」なのですが、そこはさすが“スパイス天国”のインド料理。

マスタードオイル・ターメリック・マンゴーパウダー・フェンニューグリーク リーフなど、日本の食卓ではあまりお目にかかることのないスパイスを、ギータンジャリさんは鮮やかな手さばきで投入していきます。
するとどうでしょう、「カボチャの炒め物」は瞬く間にインドの香りに包まれて、今まで味わったこともないような料理へと変貌を遂げたのです! ……これぞまさに“スパイス・マジック”。この一品で、インド料理の底知れぬ奥深さを実感しました。

さてさて、お次はお待ちかねのインドの郷土菓子。今度は「スパイス」と「砂糖」でどんなマジックを見せてくれるのでしょうか?
また次回のお楽しみに!
“旅するパティシエ” 鈴木あや
広尾のパティスリー、ペニンシュラホテルのフレンチレストランなどで修行を積んだ後、某レストランにてシェフパティシエに就任。「国と国、人と人とをつなぐスイーツ・ストーリーテラー」になることを目指し、2016年1月から各地の郷土菓子を発掘する世界一周の旅に出発する。
●ウェブサイト
旅するパティシエ, 旅する本屋