フランスの一流シェフ直伝!アルザス=ロレーヌ地方の郷土菓子「ヴィジタンディーヌ」作りに挑戦しました♪【“旅するパティシエ”世界一周!郷土菓子レッスンの旅】

世界一周!郷土菓子レッスンの旅 in フランス

こんにちは! 2016年から世界の郷土菓子を巡る旅に出た、“旅するパティシエ”鈴木あやです。

目標は、「国と国、人と人とをつなぐスイーツ・ストーリーテラー」になること。世界中で現地の人々から郷土菓子レッスンを受けながら、レシピだけでなく歴史・文化・暮らしと、立体的にその地域の魅力を発信していきます。

前回は、フランスはストラスブールでの、郷土菓子「ヴィジタンディーヌ(Visitandine)」の突撃取材の模様をお伝えしました。

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今回は老舗パティスリー「クリスチャン」での郷土菓子レッスンの模様と共に、【フランスの郷土菓子】ストーリーをお届けします!

「ヴィジタンディーヌ」の郷土菓子レッスン、スタート!

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家庭科の授業

今回先生を務めてくれたのは、マイヤー・クリストファーさん。創業者であるお父さんの跡を継ぎ、激戦区ストラスブールでパティスリー「クリスチャン」の人気をさらに押し上げた、名シェフです。

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普通なら、見ず知らずの旅人がおいそれと口をきけるような方ではないのに、まさかマンツーマンで、アルザス=ロレーヌ地方の郷土菓子作りを教えて頂けるなんて……今までの中で最も緊張する郷土菓子レッスンでした!

ヴィジタンディーヌのレシピ

ヴィジタンディーヌの材料(6㎝×3㎝程の型を約20個分)

薄力粉 …510g
アーモンドプードル …170g
粉糖 …170g
発酵バター …200g
卵白 …350g

ヴィジタンディーヌの作り方

※下準備
・皮なしアーモンドを粉状にしておく
・発酵バターを溶かしておく
・卵白は常温に出しておく

1. 薄力粉・アーモンドプードル・粉糖を合わせて振るう

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2. 卵白を加えて混ぜる

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3. 溶かして温かい状態の発酵バターを加え、混ぜる

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4. ほんのり温かい状態の生地を、型に流す

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5. 180°Cのオーブンで約17分、外側が濃いキツネ色になるまでしっかり焼成する

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……そして、できあがり〜!!

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アーモンドの香りがキッチン全体に広がります~♪

理科の授業

ヴィジタンディーヌの最大の魅力はアーモンド。使用する毎に粉状にした、自家製アーモンドプードルを使用します。また、粗挽きにすることで、食べた時にもアーモンドの粒が感じられるよう、工夫もしているのだとか。

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さらに、少し深さのある型で、比較的高い温度、且つ短時間で焼成することで、中央に水分を閉じ込め、ふんわり&しっとりとした食感を生み出します。

美術の授業

外側は、濃いキツネ色になるまでしっかり焼き上げ、断面は美しいグラデーションになるように仕上げます。

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また、ヴィジタンディーヌはかつて、花や王冠を象ったような独特の型で焼くのが基本でした。しかし今では、「クリスチャン」のような長方形の型をはじめ、舟型・丸型など、店によって様々なバリエーションがあるのだそうです。

国語の授業

ヴィジタンディーヌは、1610年に設立されたアルザス=ロレーヌ地方の「聖母訪問会」によって考案され、この会の修道女が「ヴィジタンディーヌ」と呼ばれていたことから、その名が付いたとされています。

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また、当時の修道院では卵黄をペンキに使っていたそうで、余った卵白を活用するためにお菓子が作られ、その中から、焼き菓子・ヴィジタンディーヌも生まれたと云われています。

社会の授業

「その土地のお菓子は、その土地に生まれるべくして生まれた」…と語るシェフ。

豊かな自然に囲まれたアルザス=ロレーヌ地方の人々は、自分たちの土地の食材に絶大な自信と誇りを持っており、それらをふんだんに、且つシンプルに活かすというのがこの地域の食文化の特長であり、またそれは、お菓子作りにも通じているのだとか。

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華やかなものがもてはやされがちで、流行り廃りも目まぐるしいパリなどとは違って、昔ながらの素朴な郷土菓子が、アルザス=ロレーヌ地方で愛され続ける理由はそこにあるのだと、シェフは胸を張って言います。

郷土菓子レッスンを終えて……

実際に一緒に作らせてもらった、出来立ての「ヴィジタンディーヌ」をパクリ♪

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こんがり焼けた外側はクリスピー、中はしっとりとしたジューシーな食感が絶妙です!

一見すると、特徴のない焼き菓子のように見えるかもしれませんが、口に入れた瞬間に鼻を抜ける香りの強さは想像以上。シェフの言う通り、シンプルだからこそごまかしのきかない、上質な素材の美味しさを存分に味わえる郷土菓子です!

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まだまだ日本では馴染みの薄いヴィジタンディーヌですが、同じフランスの焼き菓子「フィナンシェ」ならご存知の方も多いのではないでしょうか。

ヴィジタンディーヌよりも後の時代に、所変わってパリで生まれたフィナンシェですが、実はヴィジタンディーヌとほぼ同じ材料を使ったお菓子なのです。

見た目にも非常に似ているこの二つのお菓子が、全くの別のお菓子として扱われていることからもわかるように、ちょっとしたレシピの違いはもちろん、使う型によっても、それぞれ明確に「定義」付けされ、細かく「分類」されるフランス菓子。

それは、わずかな変化によって生まれる、わずかな味の違いの探究にも余念のない、スイーツへのこだわりの表れであり、また、フランスが世界一のお菓子大国たる所以といえるのではないでしょうか。

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それでは、ヴィジタンディーヌ独自の定義は何なのかというと、一般的には「焦がしバターを使用する」「卵白は泡立てる」の2点が挙げられます。

そして今回の郷土菓子レッスンも当然、これらの定義を遵守した作り方なのだろうと思っていたのですが……なんと、ヴィジタンディーヌをヴィジタンディーヌ足らしめるはずの、「焦がしバター」を一切使わないではありませんか!

シェフにその訳を聞くと、バターを焦がさないことで、アーモンドの香りをより主張させ、また、バター本来のミルキーな香りを優しく出したいから…という理由からなのだそうです。

さらにはもう一つの定義である「卵白は泡立てる」についても、シェフの場合は、少し重めの仕上がりにしたいという理由から、卵白を液体のまま使用していました。

これだけ「定義」を無視していたら、もはやヴィジタンディーヌと「分類」することはできないのでは?…と不思議に思っていた私に向かって、シェフはこう声をかけてくれました。

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「伝統をただ継承するのではなく、常に理由を考え、探求し、そして進化し続けることが大切なんだ。」

……先人たちの探究心が築いた「定義」や「分類」を、さらなる探究心を以て乗り越えていく。

それは、進化のために必要不可欠なこととはいえ、お菓子の激戦区であるここストラスブールで、そして歴史あるパティスリーでそれを実践することが、どれだけ覚悟のいることか。

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シェフへの尊敬の念をさらに強いものにすると同時に、世界一のスイーツ大国・フランスの一翼を担う、アルザス=ロレーヌ地方の真の底力を目の当たりにした、今回の郷土菓子レッスンでした。

“旅するパティシエ” 鈴木あや

広尾のパティスリー、ペニンシュラホテルのフレンチレストランなどで修行を積んだ後、会員制レストランにてシェフパティシエに就任。「国と国、人と人とを つなぐスイーツ・ストーリーテラー」になることを目指し、2016年1月から各地の郷土菓子を発掘する世界一周の旅に出発。

●ウェブサイト
旅するパティシエ, 旅する本屋

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