世界一周!郷土菓子レッスンの旅 in キューバ
こんにちは! 2016年から世界の郷土菓子を巡る旅に出た、“旅するパティシエ”鈴木あやです。
目標は、「国と国、人と人とをつなぐスイーツ・ストーリーテラー」になること。世界中で現地の人々から郷土菓子レッスンを受けながら、レシピだけでなく歴史・文化・暮らしと、立体的にその地域の魅力を発信していきます。
……さて、そんな“旅するパティシエ”ですが、前回はチリでの郷土菓子レッスンの様子をレポートしました。
そして5回目となる今回は、【キューバの郷土菓子】ストーリーをお届けします!
キューバって、どんな国??
“カリブ海の真珠”といわれるキューバ共和国。本島と約1,600の島々や岩礁からなる、カリブ海最大の島国です。
フィデル・カストロやチェ・ゲバラが率いた革命軍が、親米派のバティスタ政権を打倒したのが1959年。
それ以降、社会主義国家としての道を歩んできたキューバですが、市場経済活性化のために2010年に自営規制緩和、2016年にはアメリカ合衆国大統領のバラク・オバマが歴史的訪問を果たすなど、少しずつ変化の兆しを見せ始めています。
そんなキューバの首都は、旧市街が世界文化遺産にも登録されたハバナ。
スペイン統治時代のコロニアル建築の街並みを背に、今なお現役のクラシックカーが走り抜ける様子を目の当たりにすると、一体自分がどの時代に迷い込んだのかわからなくなる……そんな不思議な感覚を覚える街です。
キューバならではの食事情って?
旧宗主国であるスペインの影響が大きいのはもちろんのこと、かつて奴隷として連れて来られたアフリカ系、労働力としてやって来たアジア系など、それぞれの特徴が入り交じった独自の食文化が育まれ、米・野菜・豆・豚肉料理などが主流となっています。
ただし、社会主義のキューバではレストランをはじめとする飲食店は国営で、食事やサービスの質が低いだけでなく、品切れも多く、旅行者は食事に期待することはまずできない…というのが通説でした。
しかし、2010年の自営規制緩和で、現在までに約50万もの人々が自営業許可証を取得。これによって街には飲食店が爆発的に増加、市場競争も生まれ、食事の環境は大きく改善されたといわれています。
……とはいっても、驚くほどパサついたパン、悲しいくらい痩せたお肉に、そして何度も遭遇した品切れによる入店拒否……といった私の実体験を踏まえると、まだまだ発展途上と言わざるを得ないように思います。
首都・ハバナのパティスリーに、アポなし突撃取材!
そんな食事情の中にあって、キューバの郷土菓子なんて見つかるのだろうか…? さすがに今回ばかりはあまり期待せずに首都・ハバナを練り歩く私、旅するパティシエ。
案の定、街にはそもそも飲食店が極端に少なく、これまで旅してきた、郷土菓子であふれ返る南米の国々とは大違いだったのですが……それでも街中をかけずり回り、なんとか数軒のパティスリーを発見。
しかし、失礼かもしれませんが、そのほとんどがまともにお菓子を作っているとはとても思えないようなお店ばかり……。
ただしその中で一軒、ここは!…というお店に出会うことができたのです。
その名も「パステレリア・ドン・ファン」。大きなショーケースの中には、はじめて見るスイーツの数々……それはひと目見ただけで、きちんとした職人さんの仕事だということがわかるものでした。
「パステレリア・ドン・ファン(Pasteleria Dong Fang)」
- 場所:キューバ ハバナ(Pasteleria Dong Fang, Zanja 512, San Nicolas, Habana, Cuba)
ここでキューバの“郷土菓子レッスン”を受けてみたい!……そう思った私は、例のごとく、アポイントなしで取材のお願いへ。
社会主義国家ということもあり、きっと今までのように一筋縄ではいかないどころか、そもそもこんなことして大丈夫なのだろうか?…という不安が頭をよぎる中、勇気を出して声をかけます。
対応してくれたのは、この店のオーナーシェフのミゲル(Miguel)さん。私の拙いスペイン語で、「世界の郷土菓子を巡る旅」をしていること、そしてここで、キューバの郷土菓子を一緒に作らせてほしいということを伝えると……
ビックリするほど快く、OKを頂くことができました!!
史上初!?キューバのパティスリーの厨房へ……潜入成功!
予想外のウェルカムな対応に戸惑う私を尻目に、早速裏手の厨房へと招き入れてくれたミゲルさん。まさかキューバのパティスリーのキッチンに潜入できるなんて!
そして彼が、今回の“郷土菓子レッスン”で私に教えてあげようとチョイスしてくれたのが、「セニョリータ(Senorita)」というキューバの郷土菓子。
情報が非常に少なく、事前に調べることはなかなか難しい、謎に包まれたキューバの郷土菓子……一体そこにはどんなストーリーが眠っているのでしょうか?
詳しくは後編にて、レシピと共にお届けします♪
“旅するパティシエ” 鈴木あや
広尾のパティスリー、ペニンシュラホテルのフレンチレストランなどで修行を積んだ後、会員制レストランにてシェフパティシエに就任。「国と国、人と人とをつ なぐスイーツ・ストーリーテラー」になることを目指し、2016年1月から各地の郷土菓子を発掘する世界一周の旅に出発。
●ウェブサイト
旅するパティシエ, 旅する本屋