その名も“破れた女性の下着”!? チリの郷土菓子「カルソネス・ロトス」を作ってみた♪【“旅するパティシエ”世界一周!郷土菓子レッスンの旅】

世界一周!郷土菓子レッスンの旅 in チリ

こんにちは! 2016年から世界の郷土菓子を巡る旅に出た、“旅するパティシエ”鈴木あやです。

目標は、「国と国、人と人とをつなぐスイーツ・ストーリーテラー」になること。世界中で現地の人々から郷土菓子レッスンを受けながら、レシピだけでなく歴史・文化・暮らしと、立体的にその地域の魅力を発信していきます。

前回は、チリの首都サンティアゴで、チリの郷土菓子「カルソネス・ロトス(Calzones Rotos)」の突撃取材の模様をお伝えしました。

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今回は、ゲストハウスを家族で運営するカリーナ(Karina)さん直伝の「カルソネス・ロトス(Calzones Rotos)」レッスンの模様と共に、【チリの郷土菓子】ストーリーをお届けします!

「カルソネス・ロトス」の郷土菓子レッスン、スタート!

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家庭科の授業

ゲストハウスのキッチンを使わせて頂き、ついに「カルソネス・ロトス(Calzones Rotos)」の調理実習が始まりました!

カルソネス・ロトスのレシピ

カルソネス・ロトスの材料(約25個分)

薄力粉 …450g
ベーキングパウダー …小さじ1
※南米では、元々ベーキングパウダー込みの薄力粉が主流
グラニュー糖 …170g
レモンの皮 すりおろし …1個分
全卵 …2個
牛乳 …120g
飾り用粉糖 …適量
揚げ用油

カルソネス・ロトスの作り方

※下準備
・鍋に注いだ油に余熱を入れておく

1. 薄力粉にグラニュー糖、全卵、レモンの皮、牛乳の順序で合わせていく。

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2. ある程度弾力をもたせるまで、しっかりと合わせる。

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3. 薄力粉を振った台に生地を置き、麺棒で約1.5㎜の厚さに薄く伸ばす。

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4. カッター(もしくはナイフ)で10㎝×3㎝ほどの長方形に切り分けて、中央に少し切り込みを入れる。

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5. 中央の切り込みに片側を通して、クルリ!

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6. 約180℃の油に成形した生地を投入!(途中ひっくり返しながら、約3~4分間揚げる)

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7. キツネ色になったら取り出す

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8. 粗熱がとれたら、お好みで粉糖を飾る

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……そして、完成〜!!

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レモンの爽やかな香りが、部屋いっぱいに広がります♪

理科の授業

「カルソネス・ロトス(Calzones Rotos)」の特徴は、揚げて時間がたっても美味しく頂けるところ。

その理由の1つは、多めに配合された牛乳とベーキングパウダー。水分を多く含む柔らかい生地がふんわりと膨らむため、冷めてもカチカチに固くなりにくいのです。

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そして2つ目は、レモンの皮を入れること。油で揚げて時間が経っても油臭くなく、爽やかな柑橘の香りが残ります。

美術の授業

長方形に切った生地の中央に切れ込みを入れて、片側を中に通すデザイン。生地の厚みや、辺の長さ、切れ込みを入れる場所は、ある程度お好みだそうで、一つ一つカタチがまばらでもOK。

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カリーナさん曰く、この様に細く長めで流れる様なデザインが美しい!…とのこと。短い辺は斜めにカットするとバランスが良くなります。切り込みを広く開けすぎると破れてしまうので注意を。

仕上げに、粉砂糖を振るって出来上がり!

国語の授業

スペイン語の「Calzones Rotos」を直訳すると、「破れた女性の下着」という意味。思わずドキッしまうような名前ですが、決していやらしい意味ではなく(笑)、そこには一つのエピソードがありました。

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その昔、サンティアゴの中心地・アルマス広場で、手売りでお菓子を販売していた女の子のスカートが、吹雪の中で突風に煽られめくり上がり、彼女の破れた下着が見えてしまったのだとか。

そのときに女の子が売っていたお菓子に「破れた女性の下着」、つまり「カルソネス・ロトス(Calzones Rotos)」と名付けられたのだそうです。

社会の授業

名前の由来だけ聞くと、単にクスリと笑ってしまうようなお話で、しかもそれ以上の意味はカリーナさんもご存知ないようです。

しかしそのストーリーは、チリがまだスペインの植民地だった頃のお話。植民地時代のチリでは、海賊の襲撃や、先住民との断続的な戦争などが続き、社会は非常に不安定な状態にありました。

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そんな時代背景も踏まえて、“女の子が手売りで”や“破れた”、というキーワードから読み解くとすれば、当時の庶民の苦しい生活が反映されている…と考えることもできるのでないでしょうか?

「カルソネス・ロトス(Calzones Rotos)」がスペイン由来のものではなく、また、非常に安価に、簡単に作れてしまうという点からも、私にはそんな風に思えてならないのでした。

郷土菓子レッスンを終えて……

実際に一緒に作らせてもらった、揚げ立ての「カルソネス・ロトス(Calzones Rotos)」をパクリ!

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“揚げたクッキー”とも呼ばれるこのお菓子。 甘さは控えめで、外はサクサクとしたクリスピー生地! レモンの香りに食欲をそそられて、何個でも食べられてしまいます♪

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……と、満足感に浸っていたら、なんとびっくり、美味しい香りを誘われて、カリーナさんのご家族や、ゲストハウスに宿泊している他のお客さんも自然とキッチンに集まり始めました。

聞けば、他の宿泊客の方はフランス人とのことで、フランスとはここが似ている、ここが違うなど、世界の郷土菓子トークに花が咲いて、気がつけばみんなで夜のティータイムに!

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前述のとおり「郷土菓子」は、喜びも悲しみも含めて、その地域の歴史や当時の世相に思いを巡らせる機会を与えてくれ、そしてそれが、私の郷土菓子への興味の源泉のひとつになっています。

しかしそれ以上に、こうして気軽に国境や文化を越えて、人と人とがつながる場を創ることができる郷土菓子の“引力”に、なによりも魅かれている。

そのことを改めて思い出させてくれる、それはそれは心地のよい時間を、ここチリはサンティアゴの小さなキッチンで過ごすことができました。

日本に帰国したら私もきっと、郷土菓子でこんな場所を創れる人間になるのだと決意を新たにした、郷土菓子レッスン in チリなのでした。

“旅するパティシエ” 鈴木あや

広尾のパティスリー、ペニンシュラホテルのフレンチレストランなどで修行を積んだ後、会員制レストランにてシェフパティシエに就任。「国と国、人と人とを つなぐスイーツ・ストーリーテラー」になることを目指し、2016年1月から各地の郷土菓子を発掘する世界一周の旅に出発。

●ウェブサイト
旅するパティシエ, 旅する本屋