日本各地には、素晴らしい地酒やその土地ならではの文化があります。
南魚沼市の酒蔵の方々から、それぞれの熱き酒造りへの想いまでも直接聞けた特別な夜となりました。
こんにちは、キッチハイク編集部のkumikoです。
キッチハイクでは、日本各地のおいしい魅力を発見しお届けするために、地域の食や文化を体験できるオンラインイベント「ふるさと食体験」を各地域とコラボで開催しています。
今回ご一緒するのは、「雪ふるまち」の新潟県・南魚沼市。
参加者には、南魚沼市の3酒蔵から地酒を1種類ずつと地元ならではの食材をセットでお届け。1月16日 (土) に昼・夜と開催したこの回は、どちらも満席。地元の居酒屋で居合わせた人とお酒を楽しんだような時間となったイベントの様子をご紹介します。
*昼の会はこちら
地酒3種に雪室野菜、伝統的な調味料が事前に届く
今回届いたセットがこちら。
<南魚沼市の地酒3種>
・青木酒造「鶴齢 純米吟醸」(300ml)
・髙千代酒造「巻機 純米吟醸」(300ml )
・八海醸造「八海山 純米大吟醸」(180ml)
<地域の食材>
・雪室野菜 (にんじん、だいこん、ごぼう)
・煮物用の食材 (さといも、干ししいたけ、車麩)
・南蛮じぉっから (南魚沼市の特産品である「神楽南蛮」を塩漬けにした発酵食品)
・しょうゆの実 (炒った大豆を米麹と塩で漬け込んだ、雪国の伝統的な調味料)
・南魚沼のおいしい湧き水 (500ml)
地酒3種だけでなく一緒に楽しめる地元食材もたっぷり届きました!
見たことがない調味料もあり、どんな郷土料理に変身するのかワクワクします。
また、今回も「南魚沼のおいしい湧き水」が同梱されていました。
こちらの使い方はまた後ほどご紹介いたします。
イベント当日は、南魚沼市から中継!まずは、仲良し3酒蔵の方とご対面

今回、南魚沼市の3酒蔵から各ご担当者が中継で参加してくださいました。
実は南魚沼市民にとっても、3酒蔵すべてのお酒を飲み比べ出来る場所は貴重だそう。
「みんなで南魚沼市の地酒を盛り上げよう」という協力体制ができているようで、今回も各蔵の「はっぴ」を着てお出迎えくださいました。
最初に、今回お届けいただいたお酒の説明をしていただきます。
八海醸造「八海山 純米大吟醸」
「淡麗タイプでお米の旨味とやわらかな酸味を感じられ、麹の上品な“甘やかさ”が特徴です。
品格があり、後味のキレを感じることができるお酒で、合わせる料理は和食系で脂を含んだもの(うなぎやブリのお刺身など)がおすすめです!」 (営業担当:高野さん)
青木酒造「鶴齢 純米吟醸」
「「鶴齢 純米吟醸」には酒米「越淡麗」を使用しています。新潟県で開発され、新潟県でのみ栽培され、新潟県の酒蔵でのみ使用できる酒米です。この酒米を55%まで精米して造っており、淡麗ながら、ほどよい旨味を感じる、飲み飽きしないやさしい味わいに仕上げています。」 (ボトリング担当:高橋さん)
髙千代酒造「巻機 純米吟醸」
「うちの場合は『一本〆』という酒米を使っていて、五百万石と豊盃を交配して開発した酒米です。お酒にすると口当たりが柔らかく、喉の奥に香りやコクが感じられるような味わい。常温の方が米のコクや味わいを口の中でダイレクトに感じることができますよ。ぜひ今日は他のお酒と飲み比べて楽しんでください」 (営業担当:中澤さん)
日本酒大好きな参加者の皆さんからも、
「うちにも常備しています!」
「どんな飲み方がおすすめなのか知りたい」
「早く飲み比べたいです!」
と、序盤から大盛り上がり。これだけ興味深いお話を聞いて飲まずにいるのは辛いですよね、と言うことで、みんなでお酒を片手にお料理スタートです!
お酒を片手に「最高の肴」作りを教えてもらう

今回もおいしい郷土料理を教えてくれるのは、南魚沼市の「ふるさと食体験」でお馴染みの料理家のちきらたまきさんです。南魚沼市ご出身で、2011年に東京から南魚沼市にUターン。ご実家は米農家さんだそうです。
酒の肴に、雪国の生活の知恵が詰まった「雪室野菜」を使った「煮物」「雪室野菜スティックと南魚沼ディップ」を教えてもらいます。(雪室野菜の説明はこちら)

もちろん、今回届いた雪室野菜をたっぷり使います。早くお酒を落ち着いて飲みたい一心で、野菜や車麩を切って煮て……とサクサクと進んで行きます。
野菜は、“採れたて=おいしい”という考え方ではない!?
煮物に火をかけている間に、南魚沼ディップ用の野菜をカットしていきます。
ここで、
「皆さんは野菜って “採れたてが新鮮でおいしい!” と思っていませんか?」
と、ちきらさん。
「南魚沼市は、畑は冬になると雪に覆われてしまうので、野菜を収穫できるのが秋までなんです。そのため、白菜や大根・長ネギなど、秋に収穫した野菜を雪室に保存し、11〜2月にかけて大事に食べています。これが雪室野菜と呼ばれています。雪室は温度と湿度が一定なので野菜へのストレスが少なく、水分も保たれるため、保存している間においしくなります。なので、南魚沼の人たちは冬野菜については“採れたて=おいしい”という考え方ではないんですね。こういう価値観の違い、驚きがありますよね。」
この話には、参加者からも「私も採れたてが一番おいしい、と思ってました!」とのコメントが多数届きます。地域による価値観の違いや、色んな人の反応を同時に見ることができるのも、オンラインイベントならではの体験ですね。

野菜がおいしいおつまみに!伝統的な発酵食品でつくる、かんたんディップ



次は野菜をつけるディップ作りに。今回、ディップに使うために届いた「しょうゆの実」と「南蛮じぉっから」。ちきらさんから、各調味料の説明をしていただきました。
「しょうゆのみ、は私も新潟以外で見たことがないですね。私のおばあちゃん世代はいっぱい作って配る、というのが普通でした。私も昔は、風邪をひいた時におかゆの上に載せて食べてましたね。」今回はこのまま野菜にディップしていただきます。
「『南蛮じぉっから』は、このままご飯に乗せたり味噌とあえて神楽南蛮味噌にしたり、何にでも使えます。原料である『神楽南蛮』は、御神楽さまの顔に見えるのでこの名前になりました。ピーマンに似ているけど、なかなか辛いんですよ。」
今回は、「南蛮じぉっから」とマヨネーズを1:1で混ぜて、ディップが完成です!
おすすめの飲み方は淡麗順に。お酒の合間には「和らぎ水」を。
ついに、お待ちかねの乾杯タイムです。
さっそく、お料理とお酒の感想で盛り上がります。
「人参も大根も、雪室野菜の味が濃くておいしい!」
「車麩がふかふか!味が染みててお酒に合います。」
「こんなにおいしいお酒が存在していたなんて……。出会えて、嬉しいです!」
また、ちきらさんからは「和らぎ水」ついて教えていただきました。
「『和らぎ水』はお酒の合間に飲むお水のこと。悪酔いしないでお酒を楽しむために欠かせない存在です。南魚沼のおいしいお水をお届けしたので、ぜひお酒と一緒に飲んでくださいね。」
参加者からは「お水も届くなんて素敵な配慮です」「さらにお酒がおいしく飲めそう」と喜びの声。また、今回の3つのお酒に対して「飲む順番におすすめはありますか?」との質問が上がります。

これに対して、南魚沼市役所・U&Iときめき課の清水さんからは「個人的な感覚ですが、淡麗な順(八海山、鶴齢、巻機)で飲むのがおすすめです」とのこと。清水さんは普段からお酒の飲み方をご自宅で研究されているらしく、うれしそうに教えてくださいました。
そしてここからはお酒と肴を楽しみながら、各酒蔵のこだわりを聞いて交流するお楽しみタイムです。
【八海醸造】“この環境で名酒が作れなかったら人間が悪い。”酒造りでは、先代の言葉を大切に

まず最初にご登場くださったのが、「八海醸造」の営業である高野さん。
八海醸造
八海山の麓で酒造りをして、もうすぐ創業100年。“雷電様の清水 (らいでんさまのしみず) ”と呼ばれる八海山の伏流水を仕込み水に用いて酒造りを行う。清酒以外にも、焼酎、梅酒、ビール、麹甘酒、みりんの製造や、発酵商品企業「千年こうじや」ブランドの展開も行う。
「私が一番、印象に残っているのが先代の言葉です。“この地は、神様から良い酒を作るために賜った大地。天からの雪や澄み切った大気、八海山の霊水、山清水に育まれたお米。この条件下で名酒が作れなかったら人間が悪い”というのが口癖でした。」
【青木酒造】創業約300年。試行錯誤を繰り返し、地元の方からも高く評価される人気銘柄に
お次は「青木酒造」でボトリングを担当している高橋さん。
青木酒造
およそ300年という新潟県を代表する歴史ある蔵で、巻機山の伏流水を使って酒造りを行う。代表酒である「鶴齢」は淡麗旨口。そしてもう一つの代表銘柄である「雪男」は新潟県の王道である淡麗辛口。手造りに徹した正統蔵である。
「せっかくなので、自分の担当である瓶詰め工場の話をしますね。パストライザーという瓶詰め充填機を導入し、熱殺菌の方法を変えたんです。そうしたらアルコール感がすごくまろやかになって非常に飲みやすくなった。でも、地元の方から『飲みやすいけどアルコール感がなくて上品すぎる』と苦情が来てしまって (笑) 。地元の方に長く愛されている普通酒だけは従来の殺菌方法に戻しました。試行錯誤を繰り返し、非常に高い評価をいただけるようになりました。」
【髙千代酒造】希少酒米「一本〆」を種子から管理している唯一の蔵。巻機の自然感を感じるおいしい酒造りを
最後は、「髙千代酒造」の営業、中澤さん。
髙千代酒造
日本百名山の巻機山 (まきはたやま) の麓に位置し、明治元年創業。希少酒米「一本〆」を種子から管理・栽培し、精米に至るまで一連の過程に蔵人が携わり、徹底的にこだわり抜いている。銘柄は「髙千代」「たかちよ」など含む4シリーズで展開。
「うちは南魚沼市だと一番小規模の蔵。契約農家8件と米作りから酒造りを取り組んでいます。蔵人のリーダーである杜氏と副杜氏も契約農家の一人。酒造りに対しては、巻機山の水が流れる雰囲気をお酒にして、おいしいお酒にできるように頑張っています。」
造り手と呑むお酒は、いつもより一層おいしい
同じ地域で生まれたお酒でも、仕込む気温や酵母の違い、造り手のこだわりの違いで、まったく異なる味のお酒が生まれます。今回届いたお酒は「雪解け水」から造られているという共通点がありながらも、一つ一つの違いがはっきりしていたのが面白かったです。
今回、ただお酒の味を飲み比べるだけではなく、お酒が生まれた背景や、地域で愛され育まれてきた話を造り手から直接聞くことで、より一層深く長く余韻に浸ることができました。
今までは日本酒を味で選んでいましたが、これからはその土地や風土に思いを馳せて、そのとき旅したい気分の地酒を選んでみようと思います!
「雪ふるまち」ならではの暮らしの魅力と、温かいつながりを感じる時間に
今回、お酒の力もあってか、いつも以上に和気藹々とした空気がながれ、オンラインの壁を乗り越えてすぐ目の前にみなさんがいるような時間を過ごせました。
そして、予定した終了時刻を過ぎたらアフタータイムへ。話し足りない!という参加者と地域の皆さんが少人数で話せるお楽しみタイムです。ここでは、お酒造りだけでなく暮らしのこぼれ話も聞くことができました。
特に盛り上がったのは、スキーの話題。
週末は子供たちと、平日は会社帰りにナイターに滑りに行く!という髙千代酒造の中澤さん。「今日も終わってから行こうと思っていたけど、盛り上がって時間がなくなったので明日の朝に行きます (笑) 」とのこと。
お昼の会では青木酒造の高橋さんが移住したきっかけもスキーだった、という話が出たのだとか。なんと南魚沼市でスキー場の住み込みバイトをしていたときに知り合った女性と結婚することになり、移住を決意したのだそう。移り住んでからは、畑を耕し大豆を育て今ではお味噌も手作りして楽しんでいるようです。
東京ではできない、「雪ふるまち」ならではの暮らしを満喫している様子を垣間見ることができ、私もその暮らしや皆さんの温かいつながりの中に飛び込みたくなってしまいました!
市役所のみなさん、酒蔵のみなさん、お料理を教えてくれたちきらさん、楽しい時間をありがとうございました!
南魚沼市に遊びに行く方は必見!3つの酒蔵があるエリアをご紹介
新潟県南魚沼市は、標高2,000m級の山々に囲まれた自然あふれる土地。東京23区の広さとほぼ同じ大きさで、上越新幹線を使えば東京からも約80分と、東京からも身近な雪国です。
「かなりの豪雪地域で、雪で苦労することもありますが、雪で栄えたものも多い町です。スキー産業が盛んで、ウインタースポーツを目的に訪れるかたも多いです。」と南魚沼市役所U&Iときめき課の滝沢さん。
今回、3つの酒蔵があるエリアをご紹介いただきました。
まずは2つの酒蔵がある、塩沢地域(旧塩沢町) 。髙千代酒造と、塩沢駅の近くには青木酒造があります。
そして、六日町地域(旧六日町)。八海醸造の本社と、「魚沼の里」という八海醸造の商業施設があります。
「魚沼の里」には雪室や酒蔵があり試飲等もできるそう。観光の際は、ぜひ訪れてみてくださいね。
「南魚沼を味わう旅シリーズ」次回は、“本気の米と本気のたまご”が楽しめます!
「南魚沼を味わう旅シリーズ」と題して、11月から3月にかけてキッチハイク×南魚沼市のコラボイベントを全7回に渡ってお届けしています。おうちにいながら、まるで旅をするような気持ちで南魚沼市の「食」や「暮らし」をのぞいてみてください。
次回は、“世界最高米”の生産者の一人、関さんのコシヒカリを南魚沼からお届けして、こだわりの自然卵と「究極のたまごかけごはん」を堪能する会になります。
他の回にも興味がある方は、南魚沼市のイベント一覧をチェックしてみてくださいね。
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