多彩な食材を五感で感じて、楽しみ尽くす!
石川県金沢市と並んで、お茶とお菓子の町として知られる島根県松江市。松江では、コーヒーや紅茶を飲むようにお茶を飲む習慣が根付いていますが、それは大名茶人として名高い松江松平藩7代藩主の松平治郷(1751~1818年)、号『不昧公(ふまいこう)』の功績が大きいと言われています。
十代のころから茶の湯を学んだ不昧公は、形式や道具にこだわらず、“わび”の精神を取り入れた独自の茶道観を確立し、今も『不昧流』として知られる茶の流派を作りました。2018年はこの不昧公の没後200年にあたり、不昧公にまつわる様々な記念文化事業が展開されています。今回は、この事業の一環としてキッチハイクと島根県松江市のコラボレーションで開催されたPop-Upの模様をレポートします。
▼前回の模様
あごの焼きと浜ぼうふう。五感で感じる島根食材の豊かさ
今回のCOOKは、ナチュラルフードコーディネーターで『ORGANIC DELI GAJYUMAARU』として活躍するMASAOさんとYUIさん。豊かな自然に育まれた島根県の多彩な食材を使って、“五感で感じる”料理をつくってくれました。
今回のメニューはこちら。
「食材の香りと味わいを生かしながら、食材そのものが持っているパワーを五感で感じてもらえるようなメニューにしました。あごの焼きと浜ぼうふうは初めて使う食材だったので試行錯誤して、あごの焼きをお客様自身でちぎって食べるというワイルドな料理案も出ました(笑)。“ほったらかしすぎるだろう”ということでボツになりましたが(笑)。浜ぼうふうは、きれいな色を生かすためにピクルスにして、天ぷらで風味を楽しんでもらうように工夫しました」と、MASAOさん・YUIさん。
上:あごの焼きの磯辺焼き 下:浜ぼうふうの天ぷらとピクルス
今回のPop-Up は、松江市からHIKERに島根県の地酒が振舞われます。この日は金曜日、お酒好きなHIKERたちが飲む気満々な雰囲気で集まってきてPop-Upがスタート。 “松江のことならなんでも知っている”松江市観光文化課 髙田俊哉さんの「松江のグルメとお酒で楽しい時間を過ごしましょう」という掛け声で乾杯!
“あごが落ちるほど美味しい”という名前の由来を持つあごの焼きは、トビウオのすり身と日本酒を練ったもの。歯ごたえがあり、濃いめの醤油の味付けがお通しにぴったり。茎のピンク色がきれいな浜ぼうふうは、シャキシャキした意外な食感が美味しい! 天ぷらもピクルスも豊かな風味があって、いくらでも食べられそう。
「浜ぼうふうはセリ科の山菜で、島根県の海岸で採れます。昔はよく散歩のときに摘んで帰って、茶碗蒸しの具材や天ぷらにしていましたが、近年は乱獲で数が減って高級食材になっています。砂浜に普通に生えてくる植物なので、根っこまで摘んでしまわないように活動をしている地域もあります」と髙田さん。
HIKERの中には、「子どもの頃に海岸で摘んで食べていた」と懐かしそうに話してくれる人もいました。
島根県の海の幸に注目。『宍道湖七珍』とは?
お酒が進んできたところで、日本酒に最高のアテが出てきました。島根県の特産である板ワカメは、海で採れたワカメを洗って干したシンプルな食材。何も手を加えていないので、海の香りそのものが堪能できます。今回は、この板ワカメを炙っていただきます。
島根県特産の板ワカメは、お好みで炙ってそのまま食べる!
ワカメの塩の風味と日本酒の甘み、両方の奥深い味わいがたまらなく美味しい! HIKERたちのお酒が進んだところで、メインの3品が登場。
上:しじみのリゾット 左下:イノシシ肉と古代小麦のトマトラグー 右下:岩牡蠣のフリット
「イノシシ肉はそのままだと硬いので、2日間下処理をしてからヨーグルトに漬け込んで柔らかくしました。ジビエらしいうまみが溶けこんだトマトソースと、古代小麦のしっかりした味わいが楽しんでいただけます。岩牡蠣は、びっくりするくらいクリーミーで濃厚です。ぷりぷりの食感を楽しめるフリットにしたので、クリームチーズとアンチョビのソースで食べてください。ごはんは、しじみの出汁をそのまま味わうリゾットにしました」と、MASAOさん・YUIさん。
岩牡蠣の大きさにもびっくりですが、そのジューシーな味わいにHIKERたちは大絶賛。イノシシ肉としじみのうまみがしみ出たペンネとリゾットもとっても美味しくて、箸が止まりません!
「宍道湖には『宍道湖七珍(しんじこしっちん)』と言って、スズキ・モロゲエビ・ウナギ・アマサギ・シラウオ・コイ・シジミの7種の魚介の名物があります。島根の人は、それぞれの頭文字を取って『スモウアシコシ』と覚えているんですよ。江戸時代から宍道湖のうなぎは有名で、今でも日本全国で『出雲』という屋号を使っている鰻屋を多く見かけます。また、宍道湖では“子どもでも釣れる”というくらい簡単にハゼが釣れます。山深いイメージがある島根県ですが、実は豊かな湖の幸も自慢です」と、髙田さん。
松・金魚・山椒……、江戸の茶会に想いを馳せる和菓子タイム
おなかがいっぱいになったところで、別腹! デザートの時間です。MASAOさん・YUIさんのデザートは、ほうじ茶のアイスクリーム。松江市からは、和菓子と抹茶がプレゼントされました。
びっくりするほど濃厚なほうじ茶のアイスクリーム。島根県雲南市は、ほうじ茶も有名
抹茶は自分たちで点てていただく趣向。『Matsue Chatté』という茶器セットが配られて、みんなでお抹茶を点てます。松江には、茶人として知られる不昧公が茶会で使ったという“不昧公好み”のお菓子が受け継がれていて、『若草』『山川』『菜種の里』という三大銘菓は、松江市内の和菓子屋で食べられます。松江市内には多くの菓子処があるので、この不昧公好みの銘菓を味わいながら和菓子めぐりをする旅行も楽しそう。
島根県の7つの菓子処が創作した『春夏・不昧菓』
不昧公没後200年の文化事業の一環としてつくられたのが、今回のHIKERたちにプレゼントされた7種類の和菓子『春夏・不昧菓』。それぞれの和菓子に込められたストーリーを髙田さんから聞きながら、お抹茶をいただきます。
和菓子が培ってきた歴史に想いを馳せる豊かな時間に、HIKERたちも大満足でした。ここでは、なかでも会場の興味を惹いた3種類の和菓子を紹介します。
『舟つきの松(写真左上)』は、不昧公の正室が嫁いできたときに持参した松がモチーフ。不昧公が舟で松江城と別荘を往来する際に、この松を目印にしたところから“舟つきの松”と呼ばれて松江市民に親しまれてきたそうです。松にかたどられた練り切りの上にのっているのは、生涯仲が良かったという不昧公と奥さんの“赤い糸”という、とってもロマンティックな和菓子です。
『出雲なんきん(写真左下・薄ピンク)』は、不昧公が愛玩した金魚が由来。菓子を真上から見ると、清楚で美しかったという金魚の姿が見えます。優雅に泳ぐ姿が表現された和菓子は、ぷるぷるした食感が美味しいのですが、最初の一刺しを入れるのがもったいないくらい精巧に金魚が再現されています。
『山椒餅(写真中央)』は、不昧公の茶会記録に残っている山椒餅を再現したもの。当時は薬草として珍重されていた山椒を、茶菓子に採用した不昧公のセンスがさすが。今回の山椒餅は、奥出雲で栽培されている山椒を取り寄せてつくられています。甘さの中に山椒の辛味があって、甘いものが苦手な人にも良さそう。
豊かな自然に育まれた島根県の滋味を感じる料理と、最後は和菓子の奥深さに触れた今回のPop-Up。知らない人同士が島根県の美味しい食べ物を介して繋がり、おしゃべりが止まらないテーブルもあるほど和気あいあいとした雰囲気のまま終了しました。
出雲大社だけではない、山も海もある豊かな自然と美味しい料理がある島根県。実際に訪れたら、また違った美味しさと感動に出会えるはず。次の旅行先候補に、五感を癒す島根旅行を入れてみてはいかがでしょうか。
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