世界で一番有名なチョコレートケーキ?オーストリアのザッハートルテが、ひと味違う理由。

今回は、『ザッハートルテをつくる♡ ウィーンなバレンタインを楽しもう』と題して、オーストリア政府観光局とのコラボレーションで開催したスイートなPop-Upの模様をレポート!

満員御礼で始まったPop-Upは、甘い香りに包まれながら、オーストリアの洗練されたカフェ文化を感じる豊かな時間になりました。最後には、「美味しい!」「行きたい!」の声が起きた、楽しいひとときをお伝えします。

親子代々続くザッハートルテの味

チョコレートのスポンジケーキに、ビターチョコレートをコーティングした『ザッハートルテ』。日本のカフェや洋菓子店で食べたことがある人もいるかもしれません。

日本でのザッハートルテの認知度は、オーストリア政府観光局広報担当の青山マリアさんも驚くくらい高いようです。マリアさんは、ウィーン育ちの生粋のウィーンっ子。現在は、日本とオーストリアを行き来する生活を送っており、両国の暮らしや文化の違いについても話してくれました。

「日本では多くの方がザッハートルテを知っていて、認知度の高さにびっくりしています!

ザッハートルテは、ウィーンの中心地にある『ホテル・ザッハー』と、ウィーン王室御用達の洋菓子店『デメル』で食べられる、オーストリアの伝統的なチョコレートケーキです。 ホテル・ザッハーが、『ザッハーキューブ』という小さい四角形のザッハートルテを売っていて、それがおみやげにぴったりなので、オーストリア土産にもらった方も多いかもしれません。 甘いザッハートルテと苦いコーヒーを交互に少しずつ食べながら家族で集まって家でゆっくりするのが、オーストリア人の休日の過ごしかたです」

ザッハートルテは1800年代まで遡る歴史があり、そのレシピは秘密にされているそうです。ただ、各家庭で受け継がれてきたレシピがあり、親子代々オリジナルザッハートルテの味があるのだとか。

では、さっそくザッハートルテの作り方を見ていきましょう!今回のCOOKは、パリのル・コルドンブルーを卒業して現地のパティスリーで修行を積み、現在は洋菓子教室『Sucreries (シュクレリ) 』を主宰するパティシエRinaさんです。

成功の秘訣は、チョコレートとジャム!

まずは、スポンジケーキで使うチョコレートを湯煎で溶かし、温かい状態に保っておきます。家庭用の鍋は小さく冷めやすいので、高めの温度のお湯にチョコレートを入れておくと良いそうです。 今回のポイントは、チョコレートとアプリコット (杏) ジャムに本場のものを使ったこと。チョコレートは『Manner (マンナー)』で、カカオ70%以上のビターなものです。ウエハースがオーストリア土産として人気のマンナーですが、今回使う調理用チョコレートは、オーストリアのスーパーでしか売っていないそうです。 アプリコットジャムは、実際にホテル・ザッハーでも使われている『darbo (ダルボ)』。

Rinaさんがいろんなチョコレートとジャムで試した結果、マンナーとダルボの組み合わせが、最も本場のザッハートルテの味に近づいたそうです。 ダルボのアプリコットジャムがAmazonで買えると聞いて、HIKERの皆さんは熱心にメモを取ったり、その場でみんなでAmazonを調べたり…甘いもの好きが集まったコミュニティはとても優しい雰囲気で、会話も弾みます。

Rinaさんが教えてくれたお菓子づくりで失敗しないコツは、材料を正確に測ることと温度を守ること。生地に使うバターは常温に戻しておくことや、バニラシュガーが無い場合は砂糖で代用できることなど、家で作るときのアドバイスも教えてもらいました。

今回は、バレンタインデーが近いのでハート形のスポンジケーキです♡ オーブンで40分焼く間に、マリアさんが、オーストリアに関するとっておきの話をしてくれました。

オーストリア人は、「冷蔵庫をナンパ」する?!

「初めてヨーロッパ旅行をするなら、フランスやイギリスがおすすめです。でも、“次のヨーロッパ旅行”なら、本物を見にぜひオーストリアに来てください」とマリアさん。お話を聞いていくと、その理由がよく分かってきます。 オーストリアは9つの連邦州からなる共和国で、北はドイツ、南はイタリアに接しており中央ヨーロッパの南部に位置しています。北海道くらいの国土面積があり、人口が東京の90%程度なので、日本の都会と比べると広く感じるようです。

マリアさんはよくドイツとオーストリアの違いを聞かれるそうですが、「軍艦とワルツを比較するくらい違う」のだそうです。 「ドイツ人は言うことが“直球”で、飾らない国民性なのに対して、オーストリア人はオブラートに包んで話します。おもしろ可笑しく会話をすることに長けている国民だと思います。 例えば、ドイツ人が“おなかが空いた”と言うところを、オーストリア人は“ちょっと冷蔵庫をナンパしてくるわ”と言う。場の雰囲気を盛り上げるための、上手なコミュニケーションができるんです」 意外なオーストリア人の国民性に、HIKERの皆さんからは「関西人に似てる!」と笑いが漏れます。

オーストリアは、家のリビングの延長にカフェがあり、朝ごはん・軽食・ランチ・おやつ・夜ごはん・夜食・バーと暮らしのあらゆるシーンでカフェが使われているそうです。ユネスコのオーストリア国内委員会によって世界無形文化遺産に登録されているほど文化として根付いているカフェで、地元の人と観光客の人間観察をするのも楽しそう!その場で雰囲気を体感してみたくなります。

つい100年前までハプスブルク家が統治していたオーストリアは、自然災害が少なく、今でも多くの歴史的建造物が残っています。首都ウィーンの歴史地区はユネスコの世界遺産にも登録されており、古代ローマ時代から歴史を積み重ねてきた多様な建築様式の建物が見られます。他にも、ウィーン少年合唱団やワルツ・舞踏会文化など、ユネスコのオーストリア国内委員会によって無形文化遺産に登録されている文化は数多く、それらを日常的に体感できるところに、オーストリアの懐の深さを感じます。 マリアさんが「本物を見に、オーストリアに来てください」と言ったのは、こんな歴史が積み重ねた観光資源があるからなのですね。

たっぷりのチョコレートをコーティングする至福のとき♡

チョコレートの甘い香りがしてきて、スポンジケーキが焼きあがりました。これを半分に切って、ラム酒で香り付けをしたアプリコットジャムをみんなで塗っていきます。 実は、ザッハートルテにはオリジナルの権利を巡って“甘い7年戦争”が起きたという有名な話が残っています。

「ザッハートルテは、フランツ・ザッハーという料理人が1832年に考案しました。フランツの次男エドゥアルトがホテル・ザッハーを開業し、そのレストランでザッハートルテを出して好評を得ていたそうです。

しかし、三代目のときにホテル・ザッハーが財政危機に見舞われ、その際に援助を申し入れた洋菓子店デメルでもザッハートルテを販売したことからお家騒動が起き、どちらがオリジナルかを巡って、決着まで7年もかかる訴訟に発展したんです! 最終的に、ホテル・ザッハーのものがオリジナルという決着になりました。 二つの違いは、ホテル・ザッハーのものは、スポンジにアプリコットジャムをコーティングして、スポンジの間にもジャムを挟むのに対して、デメルはスポンジにコーティングするのみという違いがあります」とマリアさん。

今回は、ホテル・ザッハー風にスポンジの間にもジャムを挟んでいきました。チョコレートとジャムの甘い香りが漂う幸せな雰囲気のなか、皆さんの笑顔もこぼれます。

いよいよ今回のメイン工程!チョコレートを湯煎して、熱々の状態のままスポンジケーキにたっぷりコーティングしていきます。

スポンジケーキを網に乗せて、隙間ができないようにまんべんなくチョコレートを垂らしていきます。 Rinaさんが「もったいないと思わず、たっぷり塗ってください」と声がけをしますが、下に落ちていくチョコレートを見ると、やっぱりもったいない!

みんなで「チョコレートだけ先に食べたい!」とため息をつきながら、ワイワイとコーティングしていきました。 この後、室温でチョコレートコーティングが冷めるまで待って、いよいよ完成です!

オーストリア流“洗練されたお酒の飲みかた”

オーストリアは、ハプスブルグ家の統治時代にヨーロッパ各地から美味しい料理が届けられたそうです。そういえば、都市の名前が付いている料理は『ウィーン料理』だけで、ローマ料理やパリ料理はありませんね。

「実はウィーンでもワインが造られています。夏は、ワインぶどう園の中に『ホイリゲ』という屋外のワイン居酒屋がオープンし、その土地で採れた野菜や肉料理をつまみに、出来立てのワインが飲めます。 一方で、モーツァルトの生誕地で有名なザルツブルクはビールが有名で、ビールに合わせてB級グルメが発達しました。ビール好きにはたまらない地域です」

オーストリアでは、ワインやビールなど度数の低いアルコールは16歳から飲めます。州ごとに特徴のある食文化の中で、様々なお酒の飲み方を覚えていくのでしょう。9つの州を巡れば、洗練されたお酒の飲み方の一端に触れることができそうです。

歴史が育んだ伝統菓子をいただきます!

とうとうザッハートルテが出来上がりました!今回は、本場と同じように生クリームを添えて、コーヒーと一緒にいただきます。

パリパリのチョコレートを割ると、しっとりしたスポンジケーキがふんわりと甘い香りを放ちます。スポンジにたっぷり塗ったアプリコットジャムとチョコレートが絶妙に混ざり合って、酸味と甘みが口のなかいっぱいに広がります。爽やかな生クリームがアクセントになって、本当に美味しい! 初めて出会ったHIKERさん同士も、好きな食べ物を目の前にして楽しそう。今回の工程を確認したり、オーストリアについて知ったことを、マリアさん・Rinaさんと一緒に話しながら、「次は本場で食べてみたい!」という方も。「なんて美味しいの!」という声をあげながら、みんなで至福のおやつ時間を過ごしました。

マリアさんいわく、歴史的な背景もあってオーストリアは伝統を重んじるな国だそうです。伝統を守り抜いているからこそ、文化遺産が多く残っているのかもしれません。 今回のザッハートルテも、チョコレートとアプリコットの組み合わせを楽しむシンプルなお菓子ですが、時間を重ねて洗練されてきたからこそ、飽きずに食べ続けられているのだと感じました。

オーストリアに思いを馳せて

2018年5月に、運休していたオーストリア航空の成田—ウィーン間の直行便が復活することが決まり、日本からオーストリアに行く手段は、オーストリア航空とフィンエアーを選べるようになりました。 オーストリア航空の直行便は乗り換えがなく便利な一方、本数が少ない上、運航スケジュールが夏季の5月~10月のみのため、使い勝手が良いのが通年ダブルデイリーで成田ーヘルシンキ便を運航しているフィンエアー。成田からヘルシンキへの飛行時間は9時間と短く、機内のデザインは日本でも人気のマリメッコ!ヘルシンキ空港にはそんなマリメッコやフィンランド発祥のムーミンの専門店らがあり、2時間弱の乗り換えもあっという間です。

多様な文化を持つヨーロッパは、テーマを持って旅程を決めるのがおすすめ。

例えば、北欧モダンとインペリアルなオーストリアを比較する旅や、ハプスブルグ帝国の歴史を巡る旅、もちろんオーストリアの9つの州を巡って、その文化の多様性に触れる旅も面白そうです。

日本では、築100年を超える建物に触れる機会はあまりありませんが、オーストリアでは、数百年も前の建物が景色を形づくり、それが途切れることなく続いて目の前にある。そこで、時間を重ねて洗練されてきた伝統のザッハートルテを食べたらどんな気分になるのだろう?

楽しい旅の記憶として色濃く心に残るのは、間違いないように思います。 今回のPop-Upは、ザッハートルテの美味しさにうっとりしながら、オーストリアが持つ豊かな文化の一端に触れられた楽しい時間でした。

ここでは語り切れないオーストリアの魅力を見つけにぜひお出かけになってみてくださいね。

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