「食」は究極のコミュニケーション。『くらしのきほん』編集長 松浦弥太郎さんが語る「食」と「旅」と「人」|インタビュー第5弾[後編]

こんにちは、KitchHike編集部ハヤシです。

KitchiHikeインタビュー第5弾、お話を伺うのはWeb『くらしのきほん』編集長松浦弥太郎さんです。インタビュー前編に続いて、後編では、松浦さんと「食」や「旅」についてお聞きしました。

前編で作っていたトマトソースをかけたペンネやオムレツを囲んで、昼食をとりながらのインタビュー。おいしさに舌鼓を打ちながら、話は弾んでいきます。

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松浦さん特製、白身のオムレツにトマトソースをかけたもの。トマトソースがメインの一品です

レシピは目安。大小の意志決定を経て、今日の味が決まるんです

– KitchHikeマガジン編集部(以下、太字)
前編では、松浦さんが『くらしのきほん』を作るにあたっての姿勢をお聞きしたのですが、後編では、松浦さんが考える「食」とのつきあい方について教えてください。

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「僕の料理は普通ですよ」と笑いながら語る松浦さん

– 松浦弥太郎さん(以下、敬称略)
いやいや (笑)、僕はそんなに食道楽というわけでもないし、料理を極めたいと思っているわけでもないので、参考になるかどうか。

普段はどのくらい料理をされるんですか?

– 松浦
仕事で料理は毎日していますが、プライベートでは休日のお昼に作ったりするぐらいですよ。僕は、言ってみれば「普通の一人暮らしの男性ができる」料理をするぐらい。それは、ご飯が炊けて、だしを引いて、みそ汁を作る、そんなものです。

(今どき、「だしが引ける」のは、結構な料理好きなのではないか、と思いつつ) それは、誰かに習われたのですか?

– 松浦
いえ、子どものころ、台所で母が作っていたのを見ていて、自然と自分もやるようになりました。おいしい記憶は、体に刻み込まれるものですよね。特に「だし」の旨味は、脳に残ります。それにね、だしが引けるだけで、料理の幅って広がるんです。煮物やだし巻き卵だって作れちゃう。

だしは料理の基本ですよね。そうすると、やはり得意料理もだしを使ったものですか?

– 松浦
得意というほどではないですが、煮込み料理が好きですね。煮込む内に、鍋の中身が変化していくのを見ているのが好きです。だしを使った煮込み料理も好きですが、今日、撮影用に作っていたトマトソースも、煮込まれていく様子を見ている時間がいい。料理って、単に出来上がったものの「味」だけではなく、作っている時間がいいですね。

出来上がった料理そのものだけではなく、作る時間も味わい深いものだ、ということですね。

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撮影の余りの玉ねぎをパパッと炒めて、オムレツを作ってくださいました!

– 松浦
そう、料理ってね、意志決定の連続だと思うんです。レシピは目安みたいなもので、煮込み具合だとか、味の加減なんかは、最後は自分で決めなきゃいけない。現代って、いろいろなサービスが行き渡って、人は考えなくても生きていけるようになっちゃった。そんな中で、瞬時瞬時に自分で判断を下さなきゃいけない「料理をする」っていう行為はクリエイティブでもあるよね。

それは、今回作ったトマトソースみたいに、色々とアレンジの効くものを、どうやって使うか、を考えるのも一緒。薄めてスープにしてもいいし、ディップにしたり、オムライスにのせたり。ひとつのレシピをもとにして、「作る時」「作ってから」の幅が広がるといいよね。『くらしのきほん』にのせるコンテンツもね、そういう視点を持って作っています。

「あなたの家で食べさせてよ」と、人を誘うこともありますよ

では、人と外食することはあまりないですか?

– 松浦
いや、そんなことはないですよ。でも、僕の場合、この人と食事をしたいな、と思ったら「あなたのお家で何か食べさせてよ」とお願いすることがあります。その人が作ったものを食べれば、「ああ、この人は、こんな“おいしい味覚”を持っているんだ」ってわかるでしょ。

こんなにおいしいものが作れるんだ、ってもっとその人のことを好きになっちゃいます!

– 松浦
そうだよね。そもそも、「この人とご飯を食べたい」という欲求って、「もっとこの人のことを知りたい」「食べる、という時間を共有したい」ってことだから、その人が作った料理を一緒に食べれば、一番深くわかり合えると思うんです。

もちろん、二人でレストランに行っておいしいものを食べて、おいしい記憶を共有する、という楽しみ方もありますけど。

誰かとご飯を食べることは、二人の間のおいしい記憶を作ること、なんですね。

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昼食用のおかずに、ローズマリーを散らして。このひと手間で、おいしくなるんです!

– 松浦
そう、これも料理の持つ幅の広さ、だよね。

では、松浦さんがご自宅に人を招くこともありますか?

– 松浦
もちろん! そのときは、料理も作るし、あとは掃除をします。どこの部屋を見られてもいいようにね。それから、花を買って飾ります。花を飾ると、部屋が華やぐし、おもてなしの気分が高まりますよ。

お花!それは、ぜひ今後の参考にしたいと思います!

旅先で「どうやったらここに住み続けられるか」を考えていた昔

松浦さんは昔、よく旅に出ていたそうですが、今も旅に行きますか?

– 松浦
今は、旅というより、旅行ですね。昔はね、それこそ行き先を決めないで飛び出したり、「ああ、ここいいな」、と思った場所に出会ったら、真剣に「どうやったら、ここに住み続けられるか」を考えたりしていました。帰る日の決まっていない旅。今は、日程が決まっていて、何日までには帰ってこなくちゃいけない、そんな感じなので、これは「旅行」だな、と。

日程の決まっていない旅……憧れます!

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「会いたい人がいる」という理由で旅行に行くこともあるそうです

– 松浦
本当は今だって、そういう旅をしたいけど、まあ旅行もいいものですよ。やっぱり、生のコミュニケーションがとれるから。今の時代、インターネットで何でも経験できた気になってしまうけど、直接行って、話をしたり、その国の料理を食べたりする生の経験にかなうものはないよね。

そういう意味で言うと、KitchHikeを使って旅行先で現地の人の家庭料理を食べるというのも、ものすごい経験になるね。現地の人とコミュニケーションもとれるし、味覚の面でも異なる文化に触れることができる。旅行の楽しいイベントになる。

ありがとうございます!

– 松浦
その国の人とも知り合いになれるし、そのままそこに住んじゃう、なんてこともできるといいよね (笑)。
KitchHikeには、ぜひ頑張ってもらって、いろんな人のコミュニケーションツールになってほしいね。そういう活動は、どんどん応援しますよ!


 

レシピはあくまで料理を作るための目安。料理をするとは、作る時間を、誰かと一緒に食べる時間を楽しむことです、と話す松浦さん。そんな日々の暮らしを「普通だけど、ちょっとステキ」にするために、『くらしのきほん』はあるんです、とも仰っていました。

また、料理を軸に、旅先での楽しいイベントになってくれるKitchHikeへも温かい応援の言葉を下さいました。松浦さんの言うように、いつかKitchHikeを通じて、そのままその国に住むことにしました!なんて人が現れるといいなあ…!

松浦さん、ご協力ありがとうございました!ごちそうさまでした!

今回、編集部がおじゃまをした撮影現場のコンテンツは、すでに『くらしのきほん』に公開されています。「うれしい作りおき」という名前で、基本のトマトソースの作り方が紹介されています。たくさんのトマトをたまねぎやにんにく、ハーブ類と煮込むトマトソースは、日持ちがするので、瓶に詰めて人にプレゼントしてもいいのだとか!やさしいトマトの味が広がるトマトソース、ぜひ作ってみてください。

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>>>うれしい作りおき

photo by KOICHIRO KASHIWA

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[松浦弥太郎プロフィール]
1965年東京生まれ。渡米後、アメリカの書店文化に触れ、日本におけるセレクト書店の先駆けとして『COWBOOKS』を立ち上げる。多方面のメディアにて、文筆家として活躍。2006年から約9年間、雑誌『暮しの手帖』(暮しの手帖社)の編集長をつとめ、2015年4月より、クックパッド株式会社入社。『くらしのきほん』編集長。

『くらしのきほん』
食を中心に、暮らしの基本を学び、楽しみ、基本の大切さを分かち合うWebサイト。時代が過ぎても決して古びない、価値のある、暮らしの知恵と学びを発信している