『くらしのきほん』編集長 松浦弥太郎さんが語る「暮らし」と「料理」と「Web」の関係|インタビュー第5弾[前編]

こんにちは、KitchHike編集部ハヤシです。

KitchHikeが注目している人に「食」を切り口にしてお話を伺うインタビュー企画、第5弾。今回は、クックパッドのWebメディア『くらしのきほん』編集長、松浦弥太郎さんにお話を伺いました。

松浦さんは、新聞や雑誌にエッセイを連載するなど文筆家として活躍し、2006年より約9年間『暮しの手帖』(暮しの手帖社) の編集長をつとめ、2015年4月にクックパッドに入社。

7月1日にスタートした『くらしのきほん』では、編集長として、自ら料理や撮影をこなし、コンテンツ制作も行っています (!)。

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ひとつのコンテンツが作り出される現場で、暮らしのこと、料理のこと、そしてKitchHikeのことについてお聞きします!

常に”ユーザー目線”。だから全部、自分でやります

– KitchHikeマガジン編集部 (以下、太字)
今日はよろしくお願いします。『くらしのきほん』の撮影現場と聞いて恐縮していたんですが、松浦さんがご自分で撮影用の料理を作っていることにも驚きました。

– 松浦弥太郎さん (以下、敬称略)
料理を作るだけじゃないですよ。食材の買い出しから、下ごしらえ、料理、後片付けまで、全部自分でやります。撮影も自分でやります。

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準備から後片付けまで、手際よくこなしてゆく松浦さん

料理や掃除みたいな暮らしにかかわることって、常に「ユーザー目線」であることが大事だと思うんです。それなら、全部自分でやらなきゃ。まず、自分でやってみて、コンテンツにするときは「慌てずにできるか」「わかりやすいか」「楽しいか」「気の利いた感じになってるか」を気にして作ってます。

雨の日は、雨の日だから読みたくなるコンテンツを公開したい

 

コンテンツは毎日公開ですよね。そうなると、撮影も頻繁に行っているんですか?

– 松浦
ええ、撮影はだいたい週に2回くらい。2〜3時間から半日かけて行っています。テキストは先に作ってあるので、撮影をしたら、3日後ぐらいには公開していますよ。このスピード感は、やっぱりWebならではだよね。

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撮影に使う食器類、調理用具に、松浦さん私物が登場していることも!

コンテンツは1カ月先の分まで決めてあるので、あとは淡々と作業をするだけ。ただ、公開の順番は直前まで入れ替えをして決めています。

それは、どうしてですか?

– 松浦
日々の気分で公開するコンテンツを決めているんです。それは、僕の気分ではなく、ユーザーの気分。例えば、雨の日が続いているのに、散歩のコンテンツを公開しても、ぴったりこないですよね。そういう日々の空気や、あとは、アクセス解析の結果を見て、あ、昨日はこのコンテンツが読まれているな、じゃあ、あれを公開しよう、とか。

アクセス解析、ご覧になるんですね!

– 松浦
もちろんですよ。毎朝出勤すると、まず見てますね。Webのいいところは、そうやってユーザーの反応がすぐにわかるところ。

 

料理を作って食べる、という行為の中には「暮らし」があるんです

 

ちなみに、どんなコンテンツが人気なんですか?

– 松浦
うーん、料理ですね。

やっぱり毎日のことですし、見に来る人も多いんですね。

– 松浦
そう、料理をすることって、イコール暮らし、だと思うんです。
ひとことで「料理をする」と言いますけど、そこにはいろいろな行為が含まれていますよね。まず、「何をつくるのか決める」し、そこから「買い物に行く」、「料理をのせる皿を選ぶ」「テーブルの上を片付ける」。料理を作って食べる行為の中には「暮らし」があります。

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『くらしのきほん』の撮影は、思いのほか、どんどん進んでいきます。

そしてその「暮らし」は、雨が降ったり、お腹のすき具合だったり、日々の色んな気分に影響される。

Webのいいところって、そういうユーザーの「暮らし」の息づかいに寄り添えるところだと思うんです。

『くらしのきほん』では、日々の気持ちを大事にしていて、だから、コンテンツも「なるほど」「ありがとう」「あこがれる」などの感情を切り口にしたまとめ方をしています。

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Webは、まだまだ発明ができる分野と思っています

 

長く雑誌を作られていましたが、どうしてWebメディアを始めようと思ったんですか?

それはね、Webは発明ができる分野だと思ったからです。

発明?

– 松浦
何かと何かをくっつけて、新しいものを作る。例えば、『くらしのきほん』の中で公開している動画も「料理」と「音」を組み合わせた発明。手順とか、材料の分量とか、そういうことではなく、「料理を作っているときの空気」をシンプルに伝えることで、「ああ、料理を作るっていいな」と感じてもらえると思うんです。

KitchHikeだって、そうだよね。「家庭料理」と「旅人」をWebでくっつけた。Webの発明。

そう言ってもらえると嬉しいです!

– 松浦
そういう意味で、Webはまだまだ色んなアイディアが試せると思っているんです。Webの世界はまだ20年ぐらいの歴史しかないし、新しい発明ができる。新しい問題解決によって、それでWebの可能性の土壌を作りたい。今は、そのための土壌作りをしているところ。

夢が広がりますね!

– 松浦
そう、土壌作りのためのアイディアも100個以上はあるしね。

100個!そのアイディアは、どうやって思いつくんですか?

– 松浦
思いつくというより、思い出す、ですね。僕はアイディアって、感受性の記憶力だと思うんです。嬉しいとか驚いたとか、何かを体験したときの気持ち、それをもとにアイディアを作り出します。

だから、何かをする・体験することは沢山したほうがいい。それは、人と話すことでも、料理を作ることでも、それこそ、KitchHikeで人と会って食事をすることでも。そうして、そのとき感じたことをきちんと覚えておけば、それはいつかアイディアとして形になりますよ。

体験こそがアイディアの源泉になるんですね……。勉強になります!そして、KitchHikeも体験した誰かのアイディアのもとになれるよう頑張ります。

 


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トマトソースを煮込みながら、お皿を洗いながら、編集部の質問に答えてくださる松浦さん。その手際のよさには感服しました。くつくつと煮込まれているトマトソースのいい匂いをかいでいる内に、スタッフのお腹ももう限界!

出来上がりの撮影が終わったら、撮影用に作ったトマトソースを使ってお昼をごちそうしてくださることに!後半は、松浦さん特性のトマトソースを使ったお昼を食べながらの「食べること」についてのお話です。

photo by KOICHIRO KASHIWA

– インタビュー後編へ続きます!来週公開予定! –

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[松浦弥太郎プロフィール]
1965年東京生まれ。渡米後、アメリカの書店文化に触れ、日本におけるセレクト書店の先駆けとして『COWBOOKS』を立ち上げる。多方面のメディアにて、文筆家として活躍。2006年から約9年間、雑誌『暮しの手帖』(暮しの手帖社) の編集長をつとめ、2015年4月より、クックパッド株式会社入社。『くらしのきほん』編集長。

『くらしのきほん』
食を中心に、暮らしの基本を学び、楽しみ、基本の大切さを分かち合うWebサイト。時代が過ぎても決して古びない、価値のある、暮らしの知恵と学びを発信している。