「食べるもの」より「囲むこと」。小さい空間の出会いは人をもっと近付ける? | YADOKARIインタビュー[後編]

皆さまこんにちは。KitchHike編集部ライターのスズキです。

恒例のインタビュー企画、第8弾に登場いただいたのは、新しい暮らし方を提案するYADOKARIのおふたり(さわだいっせいさん、ウエスギセイタさん)。前編では、YADOKARIが始まったきっかけやおふたりの暮らし方について、お伺いしました。

yadokariとは?  未来住まい方会議http://yadokari.net/で世界の様々な暮らし方を発信し、「住」の視点から新たなライフスタイルを提案。空き家・空地の再利用支援、まちづくり地域活性化支援等も行う。数々のメディアで取り上げられている。現在ライター50人、サポーター2000人で活動中。
YADOKARI (左: さわだ いっせいさん 右:ウエスギセイタさん)
未来住まい方会議 (http://yadokari.net/)で世界の様々な暮らし方を発信し、「住」の視点から新たなライフスタイルを提案。空き家・空地の再利用支援、まちづくり地域活性化支援等も行う。数々のメディアで取り上げられている。現在ライター50人、サポーター2,000人で活動中。

後編では、理想の住まいや家族円満の秘訣!など伺いました。「住」で世の中を豊かにしようというYADOKARIさん、「食」で世界をつなげるKitchHikeと話は尽きません。YADOKARIさんのオフィス、中銀カプセルタワービルの一室で鍋をいただきながら、後編スタートです!

48時間で建てられる家?!

今まで見た中で「これは!」というインパクトあったスモールハウスはどれですか?

– ウエスギ
僕は「48時間で建てられる別荘」ですね。フラットパックといって家具のように部材が送られてきて、素人がその通りに建てると別荘になるというのがスウェーデンで約150万で売られてるんですよ。水回りもオプションで付けられるので、これを北欧の人は夏の家として家族で使ったりとか。

これが48時間で建てられるなんて!デザインもミニマルで素敵ですね
これが48時間で建てられるなんて!デザインもミニマルで素敵です
プラモデルのように送られくるパーツ。遊び心もくすぐられてワクワクしますね。
プラモデルのように送られくるパーツ。遊び心もくすぐられてワクワクしますね。

建てるプロセスも家はめちゃめちゃ楽しいんですよね。ニュージーランドの人たちが、家族の家を建てるために1年間会社休んだりしていますけど家を建てるプロセスを家族でやるとめちゃくちゃ楽しいし、そこにちゃんと家族として居ようとする、というのがあるみたいで。

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海外の事例を紹介するウエスギさん。まるで目の前に暮らしの風景が浮かぶように話してくれます。

そのプロセスを日本人はやらないのはどうなの?と海外の人に言われて。今は建築家さんにお願いして建てていただく、みたいな崇高なものだけれども、こんな風に手軽に建てられるならそれを例えば3家族が買って交代で使うとか、いろいろアイデアが湧いてきて…

確かにワクワクしますね!

– さわだ

僕はIKEAが作っている10万円のスモールハウスですね。これは一般向けのスモールハウスではなく、世界中の難民向けにシェルターをリデザインした製品で、こちらもフラットパック方式で届き、4時間程で組み立てられるそうです。IKEAお得意の大量生産により10万円くらいで発売も可能になるというお話もあります。これが一般に普及していくと住宅革命が起きそうでわくわくしますね。
こういうものを見ていると「家」や「住まう」の定義や境界線って何だろう?と考えさせられるんですよね。テントやビニールハウスなどが家になることはないのか?そもそも快適な暮らしとは何か?など、常識に囚われない真っ新な発想で色々と実験していきたいと思っています。

標準のテントの6倍、3年間の耐久性で組み立てはわずか4時間。商品化が待ち遠しいです
標準のテントの6倍、3年間の耐久性で組み立てはわずか4時間。商品化が待ち遠しいです

– ウエスギ
他にもスクールバスをオシャレに改装して、家族でアメリカ全土を旅しながら暮らすという家族とか。世界には色々な面白い住まいがあるんですよね。日本は35年ローン組んで数千万円の家を買うか高い賃貸に住むかの二択しかないのは、おもしろくないよねと話してます。

オシャレな"The Big Blue Bus Tour" 旅の様子を公開しているHPもとてもオシャレで一見の価値アリ!
オシャレな”The Big Blue Bus Tour” 旅の様子を公開しているHPもとてもオシャレで一見の価値アリ!

たくさんのこんなスモールハウスを見ると、「家とは?」という概念から考えさせられます…

家族円満の秘訣は食卓!

では食と住まいについて伺いたいのですが。ちなみにおふたりは家でご飯を食べることは多いですか?

– ウエスギ
そうですね。19時に必ず食卓を家族みんなで囲んでますよ。

えーっ!

-さわだ
その後に仕事を夜中まですることも多いですけどご飯は皆で食べますね。

– ウエスギ
毎日色々共有しなくても、ご飯を朝晩囲みさえすれば家族はイイ感じになるなと。派手に旅行行くとか、プレゼントするとかではなく毎日食卓を囲んで今日あったことを家族みんなで共有していれば、子供はまっすぐ育つと思う。その安心感が人生を生きる上で大きな原動力になる。「私は愛されている」っている原体験ですね。その他に教育はいらないんじゃないかと。愛情も感じられるし、人間形成にも大きく役立つ、何より「食」自体が良い経験として残りますよね。

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コンロと鍋さえあれば、案外どこでも食卓が生まれるのかもしれません。
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〆は、沖縄そば。小さな一室は、鍋とみんなの熱気でぽかぽかになってしまいました。

食卓を囲むことが家族円満の秘訣ということですね。家でご飯を食べるようになって家族との会話も増えましたか?

– さわだ
増えましたね。今もどれだけ忙しくても、家でご飯食べる時間があるだけで全然違うと思う。仕事も大切だけど家族も大事なんで、そのコミュニケーションのツールとして食事はいいですね。

– ウエスギ
「食べるもの」より「囲むこと」の方が大切ですよね。物や場所のステータスよりも、囲むという経験が大事。外でおいしいもの食べるのもいいけど、こういう他愛のない会話をしつつ嗜みながら愚痴言ったり楽しいこと話したりするのが意外に幸せな時間ですよね。それを犠牲にしてまで働く必要があるのか?と思います。

ワーカーホリックのような生活をやってるときは今考えると鬱のような状態がありましたけど、優先順位が変わりましたね。

– さわだ
家族に限らずミニマルな空間でご飯食べると、凄く仲良くなるんですよ。広いお店とか高級なお店も良いけど、こういう狭小スペースでぎゅっと皆で集まってご飯を食べるとコミュニケーションが円滑になり、一気に距離が近くなる。遠い昔、茶室の中でもそういうことがあったのかもしれませんね。

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家族の話をしてにんまりとするさわださん。逗子で親子三人平屋暮らしをしているそう。

– ウエスギ
元々日本の戦前までの長屋暮らしは、4畳半と2畳の土間があるところに家族5~6人で暮らしてるのが普通だった。彼らは現代でいうコレクティブハウスと同じで100人ぐらいの集落で炊事場とか井戸が共同で使うようになっていたので、家族とも地域の人とも距離が近い。

戦後から1人1部屋が与えられるようになってきて、うつ病や精神的な病も増え始めて、それだとマズイというので、最近の日本の住宅は「人の気配を感じられるように」ということを意識し始めています。仕切りを極力減らした間取りや、仕切りとなる壁の一部分に隙間が出来るよう設計されたりしていますね。

ある意味では、昔の良き部分をもう一度組み立てているということですね。

ちなみにこの建物も共有のトイレやシャワーがあって、コレクティブハウスと同じなんですよね。もうちょっと面白いスペースがあったらと思うんですけど。そしてこのカプセルは外して持って行けるので、1ルームマンションのコンセプトの始まりでもあるんですよ。

中銀カプセルタワービル:1972年に黒川紀章が設計し、世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅。老朽化等の問題があるも、国内外問わずファンが多くそのコンセプトに共感した入居者も多い。今回オジャマしたYADOKARI株式会社のオフィスもこちらに。
中銀カプセルタワービル:1972年に黒川紀章が設計し、世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅。老朽化等の問題があるも、国内外問わずファンが多くそのコンセプトに共感した入居者も多い。今回おじゃましたYADOKARI株式会社のオフィスもこちらに。
「中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟」(中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト刊)の1ページ。住人たちへの取材を行い、建築としての価値を再確認・再発信するビジュアル・ファンブック。現在住んでいる住人の方の暮らし、生の声を知ることが出来る貴重な一冊。お2人とも良い笑顔!
「中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟」(中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト刊)の1ページ。住人たちへの取材を行い、建築としての価値を再確認・再発信するビジュアル・ファンブック。現在住んでいる住人の方の暮らし、生の声を知ることが出来る貴重な一冊。おふたりとも良い笑顔!
現在のオフィスのbeforeがこちら。腐敗でボロボロの状態からの…
現在のオフィスのbeforeがこちら。腐敗でボロボロの状態からの…
after!!サポーターさん達と皆でDIY。さすがです!
after!!サポーターさん達と皆でDIY。さすがです!

– さわだ
43年前からミニマリズムとかモバイルハウス、ノマドということを黒川紀章さんは言っていたんです。2010年代からその時代にタイムスリップした未来の人だったのかもしれない。

一度お会いしてみたかったなとは思いますが、生きていたら僕らの活動をどう思ったのかなと考えます。でもまあ「遅過ぎ」って相手にしてくれなかったでしょうね(笑)

まさに原点!yadokariさんにぴったりのコンセプトですね。
※カプセルタワーの新オフィスリノベの詳細はこちら

ミニマルライフの実践ツール 「INSPIRATION」

YADOKARIでは、スモールハウス構想から企画設計まで行っているとお聞きしましたが。

– ウエスギ
YADOKARIは建築家でもハウスメーカーでも工務店でもありません。でも、YADOKARIオリジナルのスモールハウスを自ら作りたい!という構想があって。

それを実現するために、ユニットハウス・プレハブの製造・販売を手がける企業と共同で、スモールハウスの開発をしたんです。

– さわだ
想定よりもはるかに時間がかかりましたけど。開発には半年ほど、設計・デザイン・法規制・販売方法も、前例が無かったんですがみんなで手探りで進めました。それで無事、昨年の春から販売をできることになりました。

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ミニマルライフを実践できる小さな家「INSPIRATION」。2015年にスタートしたYADOKARIさんの新プロジェクトです。

いよいよツールまで提供しちゃうなんて、凄いチームですね!

– ウエスギ
簡易なスモールハウスは断熱の程度が低い場合が多いんですけど、YADOKARIスモールハウス「INSPIRATION」は、天井・壁面に断熱材を入れてます。大開口の4面窓もあって、結露を防ぎながらちゃんと景色を楽しめる作りにしていますね。

– さわだ
発売時には、長野県茅野市で開催された「小屋フェス」でモデルルームを展示しました。今年も春頃には軽井沢でまた展示をしたいと考えています。KitchHikeもそうだと思いますが、暮らしに関わることなので現場を見て感じてもらえたら嬉しいですよね。

内装-620x412
フローリング・タイル施工、収納棚も設置します。
完成-620x411
小屋フェスでの展示!布を貼るとまた雰囲気が違いますね。芝生との相性もばっちり。

では最後にKitchHikeへのメッセージをお願いします。

– ウエスギ
食のサービスっていろいろありますけど、人がメインのサービスはあまりなくて。食といいつつも、人間との関係性や集う場を大事にしているのがKitchHikeの一番の魅力。食をテーマに人とのつながりを見直そうというところが他のサービスとどこも被ってないと思います。

– さわだ
えーと。頑張ってください!(笑)

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2015年末にYADOKARIが出版した新刊「月極本」!世界中のミニマルライフが紹介されています。限定2,000部。

インタビューはこれにて、終了!

日本の古い慣習や常識にとらわれず、自由に悠々と暮らし方を発想していくおふたり。なにが豊かなんだろう?どうやったらもっと豊かに暮らせるんだろう?いつも自分に問いかけている姿勢にとても感銘を受けました。世の中に伝えるだけではなく、具体的に実践な方法まで提供するのは、まさに新しい時代の開拓者ですね。

暮らし方の多様性を教えてくれたYADOKARIさん。切っても切り離せない“暮らし”と“食”。もしかしたら、今年あたりYADOKARIさんとKitchHikeでなにか一緒にやるかも?!

さわださん、ウエスギさん、どうもありがとうございました!KitchHikeはYADOKARIを応援しています!