麦茶のようにぐびぐび飲める、おかわり必至のビターエール!HOPPIN’ GARAGEビール第11弾 中川さんの『ただいま!ビター』乾杯レポート

2018年10月に始まった『HOPPIN’ GARAGE』。
「こんなビール、あったらいいな」という熱い想いを持った人が、つくりたいビールをサイト上で応募して、HOPPIN’ GARAGE事務局の審査の上で選ばれた人がサッポロビールのブリュワー(醸造責任者)と一緒にオリジナルビールを製造するという、ビール好きにはたまらないプロジェクトです。

HOPPIN’ GARAGE 第11弾のビールを手がけたのは、食と農の未来を考え事業化する(株)OPENSAUCEマネージャーとして石川県金沢市にてクラフトジンの蒸留所立ち上げの準備を行なっている中川 俊彦(なかがわとしひこ)さん。

実は金沢に移住する前には神奈川県でクラフトビールのブリュワーをしていた中川さんはまさにビールづくりのプロ。そんな中川さんがビールづくりの現場を離れてもなお、つくりたいと今回企画したオリジナルビール『ただいま!ビター』には、麦茶のように香ばしくもぐびぐびっと喉を潤すことのできる軽やかさ、麦茶に感じるような哀愁こもったデザイン、ブリュワーだった頃からビールを通して伝えたかった想いなど、中川さんのこだわりがたっぷりと詰まっていました。

今回は、HOPPIN’ GARAGE チームが東京を飛び出して金沢で開催した『ただいま!ビター』のお披露目Pop-Upの様子をレポートします。

“麦茶感”と“ビール感”のせめぎ合い!?あるひと工夫で両立したおいしさに

北陸随一の繁華街、金沢市片町にて開催された今回のお披露目Pop-Up。HOPPIN’ GARAGE としてもはじめての金沢開催にメンバー一同ドキドキでしたが、オープン時間には今回の会場となったStarlit KITCHEN & BARの店内は申し込みいただいたユーザーでいっぱいに。HOPPIN’ GARAGE初の北陸開催かつ元ブリュワーさんが企画する新しいビールのお披露目とあって、石川県だけでなく富山から駆けつけてくださったユーザーもいる中、『ただいま!ビター』への期待値もMAX !みなさんの手にビールが渡ったところで中川さんの掛け声で乾杯しました。


グラスに注がれたビールは、麦茶よりも少し濃いめの焦げ茶色。注ぐとふわっと香ばしい香りがします。飲んでみると麦茶らしい柔らかい甘みとビールらしいほのかな苦味がほどよく同居していて、ひと口、もうひと口とついつい進んでしまいます。

そして、みんな、アルコール度数を知って驚き!

3%というから、それは飲みやすいわけです。
ブリュワーとして数々のスタイルのビールをつくってきた中川さんが、そんな『ただいま!ビター』をつくった経緯を聞くべく、イベントは実際に今回のビールづくりを担当したサッポロビールのブリュワー成瀬史子さんを交えたまさにブリュワーどうしのトークセッションへと移っていきます。

ー 中川さんがブリュワーとしてこれまでたくさんのビールをつくってきたと思うのですが、今回、『ただいま!ビター』をつくろうと思ったのはなぜですか?

中川さん (以下、敬称略):子どもの頃、暑い夏の日にただいまーと家に帰ってきて冷蔵庫から取り出した麦茶をぐびぐびっと飲んで喉がすうっと落ち着く、というような経験て誰でもあると思うんですけど、その感じ、大人になるとビールに似たものを感じていて。

特にもう20年くらい通い続けていた六本木のスコティッシュパブにあったイングリッシュビターに、そんな、麦茶のような飲みやすさ、飲み飽きなさ、を感じていたんです。

日本でも、そんな麦茶のような香ばしさと飲み飽きなさを兼ね備えたビールがあったらいいなと思ってブリュワー時代からつくりたかったんですけれど、これまでなかなかチャンスがなくて、今回それがやっと実現しました。
ー たしかに、ビターって、あんまり聞かないスタイルですよね。

中川:そうなんです。日本だとあんまり飲めるところも売っているところも少なくて。僕がいた国内のクラフトビール業界でも、定番商品として出しているところはほとんどなかったですね。

でも、クラフトビールをつくっていたときから、ビールと聞くと苦い飲み物と想像されがちでそれを苦手だと思ってきた人も、苦味の少ない異なる種類のビールを飲むとそれをきっかけにめちゃくちゃハマる人を見てきていて。

そういうきっかけになったらいいなと思って、本当は飲みやすいのにまだあまりつくっている人がいなくて日本でもあまり知られていないジャンルのこんなビールがつくりたかったんです。
ー どうですか?思い通りの味になりましたか?

そうですね。本当に思い通りの味でした!

今もちょうど今回のブリュワーの成瀬さんともお話ししていたんですが、アルコール度数は低いけど水っぽくならずに、麦の香ばしさとほのかな甘みがちゃんと出ていて。僕の望んだ麦茶感とビール感がちゃんと両立できていた。

こんなビールがブリュワー時代から機会があればつくりたいなあと思っていたのですが『ただいま!ビター』のように麦の香ばしさや柔らかな甘みを残しつつアルコール度数は低く抑えるのって、醸造技術的にもとても難しいんですよ。だからなかなか挑戦できる機会がなくて。それを今回、ここまでつくりあげていただいたのは、さすがだなと思いました。
ー それでは、実際に中川さんの企画した『ただいま!ビター』をビールとして具現化してくださった、サッポロビール成瀬さんにもお話しを伺ってみたいと思います。このビールをつくるにあたり、どこが一番難しかったですか?

成瀬さん (以下、敬称略):まず最初にこのアイディアを聞いたときにさすが元ブリュワーだなと思うアイディアで、上司からも「それは大きな商品に成長しそうだね」と言われていてこれは私も気合いを入れなければ…!という思いでした。

このビールは、「麦茶のような」というコンセプトでぐびぐび飲めるようにアルコールを低めにしようということだったんですが、アルコールを低めに抑えるとどうしても水っぽく感じやすいというのが課題でした。

それで、酵母がアルコールをつくるために食べる栄養源をつくるときに、酵母が食べられないような栄養源を多めにしておいてあげることで、あまりアルコールを量産しないようにという工夫をしました。それでアルコールは低めで飲みやすいけれど、味わいはしっかりあるというところを実現できたのかなと思います。
ー 飲んでみて、とっても麦茶っぽい!とびっくりしたのですが、この麦茶っぽさというのはどうやって出したんでしょうか。

成瀬: 麦茶というのは大麦を焙煎してできているのですが、今回はビールに使う大麦麦芽をよく焙煎した黒麦芽というのものを使っています。それを、普通は仕込みの最初の方で入れるんですが、今回は仕込みの後半で、発酵が始まる直前に入れることでより香ばしさがビールに最後まで残るように工夫しました。

出汁をとるときに“追い鰹”ってあると思うんですけれど、言うなれば、“追い麦芽”ですね。
ー なるほど!追い麦芽とは、はじめて聞きましたが、それが麦茶のような風味の秘訣だったんですね。今回、瓶のラベルデザインもちょっと面白いんですよね。

中川:ラベルのデザインを考えてね、って言われたときにどうしようかと思って考えました。実は、今日のメニューで僕の大好きなアジフライを出してもらったのもそうだったんですが、子どものころの麦茶のイメージとかを思い出したときに“昭和感”みたいなもを今回のビールでも大事にしたくて。昔読んだコミックとか漫画に登場するような昭和のオヤジみたいな感じがいいとか、東京や大阪の下町の感じとか、デザイナーさんといろんなイメージ画像を共有したりしながらこの4コマ漫画に落ち着きました。ここで出てくる人の家族設定なんかも出し合って、そういうストーリー性のある感じにしました。

食の未来につながるのは、個人に紐づくレシピとストーリー

今回、ビールの企画者である中川さんは “元ブリュワー” なわけですが、ブリュワーを辞めた今、食と農の未来を考え事業化する (株) OPENSAUCEという会社のマネージャーとして金沢に移住しました。サッポロビールとKitchHikeが共同で運営するこのHOPPIN’ GARAGE もまさにビールという視点から未来の食のあり方を考える中で生まれたサービス。大きく見れば同じ“食”という領域で近しい未来を見ながら活動している3社が集まる貴重な夜に、今度は中川さんに加えてこのHOPPIN’ GARAGE の仕掛け人であるサッポロビール マーケティング開発部土代さん、KitchHike共同代表の山本雅也の3人でのトークセッションへと移ります。
山本:こんばんは。KitchHike の共同代表、山本雅也と申します。KitchHike は、「みんなでごはんを食べよう」をスローガンに、家やシェアキッチン、レストランに食べることが好きな人達が集まり、みんなで料理を食べたりお酒を飲んだりして、食をきっかけに人のつながりをつくるサービスです。このHOPPIN’ GARAGE は実はKitchHikeのサービスを使って募集をしていて、皆さんもそれを使ってお申込みいただいたのですが、もともと KitchHike のことを知ってくださっていたという人、いますか?

ー パラパラと手が上がる ー

なるほどなるほど。半分くらいですかね!ありがとうございます。
まだまだ金沢をはじめこの北陸地方では KitchHike のユーザーさんは少なくて、今日、知っていただいた方を含めて是非とも金沢でも多くの方に使っていただけたらなと思っています。

金沢は本当に食文化の歴史が深くて、中川さんが所属するOPENSAUCEさんはこの金沢で様々な角度から食や農の未来にアプローチされていると思うんですけれど、中川さん、ぜひ少し詳しく教えていただけますか。

中川:はい。OPENSAUCEは、金沢で2017年12月に創業した会社で、ホームページ上などでは『「食にまつわる遺伝子のすべて」をオープンデータ化し、体験として進化させながら後世に残して行くプロジェクト』なんてちょっと大それたことを書いたりしているんですが、ものをつくるにはレシピや設計図が必ずあると思うんですが、それをみんなにシェアしていこうということをやっていく会社をつくろうということではじまったんです。

その活動のアウトプット、表現する場としてつくったのが先週に、あるイベントで先行お披露目を行なった A_RESTAURANT で、正式には11月ごろにオープン予定です。
こちらでは、シェフがいてレストランとして運営しながらもあちこちから様々な料理人の方に来てもらってその時々で厨房に立ってもらおうと思っています。でも、いわゆるラグジュアリーな空間でコース料理をみたいなことをしたいわけではなくて、誰かの母ちゃんが作った名もなき料理とか、伝承する人がいなければなくなっちゃうような伝統料理ってあると思うんです。名もないものでも、美味しかったりストーリーや思い出が詰まっていたりする。伝統にもそこには理由やストーリーがある。それをきちんとレシピとして残して僕らなりに再解釈をして提案していこうよ、ということをやっています。
山本:先日のレセプションパーティ、実は僕もおじゃましたんですが、こんなコースが出てきて、OPENSAUCEに関わる様々な人の思い出の料理がストーリーとともにコースに落とし込まれているんです。ホームページに全部レシピも出ているんですよ。すごくおもしろいですよね。

HOPPIN’ GARAGE と OPENSAUCE の A_RESTAURANT 、それからKitchHikeもそうなんですが、もちろんアプローチの仕方はそれぞれに違うものの本質的なところは似ているなと思っていて。一般的な味とか、料理の作り方っていうものではなくて、誰かの個人の記憶や嗜好に由来した料理づくりやレシピづくりっていうのが、今、求められているんじゃないかと思うんです。

土代さん、そういう意味では、HOPPIN’ GARAGE をやっている中で思うところなどありますか?
土代さん (以下、敬称略):そうですね。HOPPIN’ GARAGE もすごくレシピに重きをおいています。ビール会社としてはやはりたくさんの商品を発売してきて、中には時代の流れの中で短期間で飲めなくなってしまうものもある一方で、それを惜しまれる声というのもいただいています。なので、もっともっと我々が作ってきたレシピというものを大事にしていきたいよね、という話も出ていて、そういう意味では A_RESTAURANTの取り組みにはとっても共感するものがあります。

同じものでもこの人がどんなシーンで食べたり飲んできたのか、というようなストーリーが大事になってくるのかな、というのは個人的にも考えていて、HOPPIN’ GARAGE も全く同じで、今回第11弾なのですでに11種類のビールができたわけですよね。レシピをオープンにしていることについても社内でもそこまでやっていいのか?という意見もあるんですが、これからの時代はそうじゃないよなと思っています。もっともっとオープンにしていって、皆さんに知っていただいて、それいいね!とたくさん言っていただいたら商品としてつくるとか、そういう形になっていったら面白いのではないか、というような話とも近いなとあらためて思いました。

山本:やはり、レシピをオープンにするって、相当な覚悟ですよね…!社内でも色々な意見が上がったんですか。

土代:昨年の10月にこのサービスをはじめるまでにも1年くらいの準備期間があった中でもちろんやはりそれはありましたよ。でも、こうやって未来のビールのあり方を構想する中で説明を続けていって、少しずつわかってもらえて。

このイベントもここで飲んで終わりじゃなくて、やはりこういうことを重ねていった先に反響の大きいものは商品化、ということも含めてHOPPIN’ GARAGE としてやっているので。
山本:では、ちょっと、せっかくなので今回の『ただいま!ビター』が商品化されて欲しいかどうか、聞いてみましょうか (笑)!

土代:いやー、それはちょっと僕の口からは聞きづらいですよね (笑)。実は僕、商品開発部門にいたこともあるんですが、ビール会社のビールのつくり方って、普段だと、みんながどんなビールを飲みたいかというリサーチから入っていくところがあるんですね。でも、HOPPIN’ GARAGEのつくり方って、個人の嗜好に由来して企画者自身を表現しているものでもあるのでそれがどう評価されるかはドキドキしますよね。ここは中川さんから聞いていただければ…!

中川:わかりました (笑)。では今日楽しんでいただいたこの『ただいま!ビター』を缶ビールとか瓶ビールで飲みたいな、商品化して欲しいなという人は拍手をお願いします…!
ー パチパチパチ(大喝采)ー

中川:ありがとうございます!ということで、サッポロさん、是非ともよろしくお願いします!


イベント終了後に、「中川さんにとってビールとは?」とお尋ねしたところ、しばらく考えた後に「出会いです」と答えてくれた中川さん。

「新しい出会いを求めに行くこともあるでしょうし、出会いによって得られる驚きや嬉しさもあると思う。抽象的にいえば僕にとってビールはそんな存在かな。」とおっしゃっていました。

今回の『ただいま!ビター』もイベントに来て一緒に乾杯してくださったみなさんの新たな「出会い」になったのではないでしょうか。

『HOPPIN’ GARAGE』第12弾ビールのお披露目は、10月7日 (土) に開催が決定。次回のオリジナルビールもお楽しみに!